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私は田舎暮らしです。最近、家の近くのラーメン屋が列を作っています。都会からの道路が整備されたことで県外ナンバーの車が目立ちます。私の今後を心配する妻が、「あなたも引退後はラーメン屋をすれば。でもいくら儲かるのかしら?」と言う。飲食店の難しさと、いつまで働かすつもりなのかと内心思いながら、あのラーメン屋の広さからすると席数、回転数、客単価、営業時間、曜日や季節を考慮するとだいたい月にこれくらい売り上げて原価を引くと…と言うと、文系の妻が怪訝そうな顔で「どうしていつも数字に換算するの。理系の悪い癖」と言う。いや、単に質問に答えようとしただけなのにと思いながら苦笑い。そうか妻からすれば思考プロセスは必要なく答えが知りたかっただけか。反省です。

ところで「フェルミ推定」をご存知でしょうか。論理的思考を試すのに良いとされています。随分前アメリカの大手IT企業が入社試験に取り入れたことや、地頭という言葉とともに話題になった記憶があります。
フェルミ推定とは、とらえどころのない量を幾つかの手がかりから論理的に推論し概算することです。由来は物理学者のエリンコ・フェルミ氏が、核実験の映像からその威力を推定したことからきています。通常は突拍子も無い数字の推定なため、クイズのようにも感じます。例えば「アメリカのシカゴには何人のピアノ調律師がいるか?」等です。
ニュアンスは異なりますが、公務員試験に用いられる数的処理も論理的思考を測る物差しと言えるでしょう。例えば「9枚のコインがある。そのうち1枚だけ偽物。偽物は本物のコインより軽い。天秤を用いて最低何回で偽物を見つけることができるか」等です。答えは最後に書きますのでもしよろしければ考えてみてください。

では、論理的思考がなぜ重要なのでしょう。ビジネスでも何でも判断する場面がたくさんあります。「判断」とは、「分からない時にする行為」とも言えると思います。分かっていれば判断や決断は必要ありません。選択すれば良いだけです。この「分からない」をいかに分かるようにするためには推論が必要です。当たり前です。正しく推定するには論理的な推論と、多くの事実で精度を上げなければなりません。間違った判断は、ことによっては一大事です。アメリカが国家レベルで犯した推論からの判断ミスに、イラクの大量破壊兵器の保有疑惑が記憶に新しいでしょう。イラクは大量破壊兵器を保有していませんでした。
推論は人間ならではの能力と考えられます。重要ですが努力しないと身につかないようです。企業が試験でその能力の有無を判定するのもそのためでしょう。もちろん教育も重要で、歴史を遡るとプラトンは推論能力をつけるには数学が重要だと説きました。ラテン語教育も、言語自体は既に使われなくなっていますが、その難解さと体系から他の言語の習得がしやすくなることと、論理的思考が身につくとされ重要視されています。
ところが、推定には興味深い側面があります。多くの人に同じ問題を推定させた場合、その平均が極めて事実に近いとされています。これは集合知と呼ばれます。詳細は専門家に委ねるとして、大雑把に言うと、推論する人が多く居れば正確な数字を知っている人もいたり、間違いが相殺されたりします。
昨今のビッグデータとコンピュータ技術がこの集合知の役割を果たしはじめています。推定の精度が判断をともなわない選択まで上げられるのならコンピュータで十分です。かえって人間では何らかのバイアスがかかってしまいます。コンピュータに計算させるためのアルゴリズム(手順)とデータがそろったことで、この推定もコンピュータによる計算が可能となりつつあります。特定領域に限れば、既に人間を介せず推定が行われています。例えば東証での株取引の約7割もがコンピュータアルゴリズムによるものだと言われています。また、最近では保険や銀行のレイティング判断も人間に代わって行なってくれます。

当社代表の村上は「判断は人からAIへ」と良く言います。今後人間が面倒だと感じる多くの判断は安価にシステムが行ってくれることでしょう。いや、すでに人間の判断は減っていますよね。だって、コンピュータによるお薦めを選択している時点で、判断ではなく選択になっていますしね。

さて最後に問題です。「日本中でエクボのでる人、何人だ?」答えは……、ゼロ。エクボは、へこみます。お後がよろしいようで。おっと忘れるところでした。先の偽物コイン問題の答えは2回です。ちなみに私は1分以内で回答できました。妻に自慢したところ反応は「あっそ」でした。
そうか妻はそんな能力はいずれ人間には必要なくなると知っていたか…

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殺人事件を特命係が解決する。ご存知のテレビドラマ「相棒」です。文化人類学者が死体から死因を特定し殺人事件を解決する。アメリカの犯罪捜査ドラマ「Bones」。このどちらのドラマにも、数学の難問が原因で起こった殺人事件のエピソードがあります。

その難問とは「NP困難問題」です。これは計算が多すぎてコンピュータを使っても時間がかかりすぎで解けない問題のことです。以前、量子コンピュータでふれた組合せ最適化問題などもこれにあたります。インターネットの安全性はこの難問を利用した暗号に支えられていると言っても過言ではありません。

ここで、暗号のたとえ話に挑戦してみます。温泉街に行くと湯巡りができます。「宿から裸をみられずに湯船に入る方法」を考えていきましょう。

まずは部屋から直接その湯船にトンネルが掘られているとします。部屋で裸になりトンネルを通って湯船に入ることができます。しかし問題は湯船の数だけトンネルが必要で、部屋もたくさんありますから、温泉街がトンネルだらけになることです。通れなくなる事故も想定して別の穴を掘っておく完全対策も考えると、ますますトンネルだらけになり工事費も莫大になります。部屋や湯船が増えるとその都度掘らなければなりませんし、部屋側と湯船側で調整しながら工事しなければなりません。これが「インターネットVPN」の例えです。

温泉街なら普通は浴衣を着て外を歩いて行きます。浴衣を着れば裸をみられず外を歩いて湯船にいけますね。部屋を出るときに浴衣に着替え、外を歩いて温泉に行き、湯船に入る前に浴衣を脱ぐ。この浴衣が「暗号」です。でも浴衣は単純な構造なので絶対安全とは言えませんね。では、鍵のかかる鎧にしてみてはいかがでしょう。でも鍵を持っていかなければ鎧は脱げませんから、悪意のある人に出会ってしまえば、その鍵で鎧が開けられる可能性がありますね。

そこで鍵に細工をします。鍵を2つ作り、閉めるときと開けるときは交互に別の鍵が必要な仕組みにします。部屋を出るときは部屋にある鍵で鎧を閉め、その鍵は部屋に置いて行きます。湯船では温泉に置いてある別の鍵で開けます。帰りには温泉の鍵で閉め、帰ってから部屋の鍵で開けます。これだと道中は鍵を持っていないので安全ですね。しかし、疑い深い人なら、鍵穴から複製できるじゃないかと考えますが、鍵穴から類推し2つの鍵を複製しようとすると、とんでもない数の組み合わせの計算をしなければならない仕組みになっています。例えば2つの数字がわかっていると、掛け算はすぐに計算できますが、数字から掛けた合わせた2つを求めるには全ての組合せを試さなければなりません。大きな数字や素数などを用いることで「NP困難」になり、全ての組合せから答えを実質的な時間で求められず鍵を複製できません。

そして部屋には湯船ごとの鍵が置かれていると想像してください。トンネルを掘るよりずっと楽ですね。部屋や湯船が増えれば鍵を増やせば良いので、部屋が変わっても何も変わりません。またトンネルとちがって、どこでも堂々と通っていけます。これが「RSA暗号」と言われる方法で、インターネットの至る所で利用されています。

当社はこの暗号方式を利用した二つの認定を取得しています。

ひとつは、「公的個人認証サービスにおけるプラットフォーム事業者」として総務大臣の認定を取得しており、もう一つは、一般財団法人日本データ通信協会「タイムビジネス信頼・安心認定制度」における、「時刻認証業務認定事業者(TSA)」の認定です。難しく書くとこうなりますが、「マイナンバーカードを持っている人の本人確認ができ、スマホのカメラで撮った領収書を原本として保証すること」ができます。複製や改ざんが可能なデジタルデータは、暗号技術を使うことで信ぴょう性を担保することができます。

また、最近は仮想通貨が話題ですが、仮想通貨と言うと、ビットコインと電子マネーであるプリペイドカードやクレジットカードもある意味似ています。ビットコインを他の電子マネーと区別するために「暗号通貨」と呼ばれることもあります。暗号通貨の仕組みは誰が誰にいくら送金したかの行為の証明と捉えることができます。

人を保証したり、物を保証したり、行為を証明する事は現実社会では当たり前ように行われています。しかしインターネット上のデジタルデータは複製や改ざん、なりすましなど不正行為が可能なため、安全な取引には暗号技術を使った認証技術が必要不可欠となります。

想像したくはありませんが、将来物凄く高速なコンピュータが登場し、暗号を解くかもしれません。実は先の2つのドラマのエピソードは、「NP困難問題」の解を見つけたことで社会に与えるインパクトから利権が働き、殺人事件にまで発展する話でした。思わず苦笑です。

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「あなたは本当にお金のかからない人ね」と妻に言われます。着るものや持ち物にこだわるでもなく、良い車を欲しがるでもなく、ただ趣味の本さえ買えていれば文句を言わない、そんな私への妻の感想です。心のうちでは「もう十分やんちゃはやりきりました」と思いつつ決して口には出せません。日本人として“世界でいちばん貧しい大統領”ホセ・ムヒカ大統領の美徳を失ってはいけませんよね。さて、2018年最初のブログとなります。いつまでネタが続くかはわかりませんが、今年も頑張ってまいります。

今「お金」が話題となっています。仮想通貨の話ではなく「キャッシュ(現金)」です。政府の「日本再興戦略」がベースとなり、世界屈指の現金大国日本もオリンピックまでにキャッシュ依存率を下げようと動き出しています。

キャッシュ依存率を下げるには色々な決済方法が必要となります。クレジットカード、プリペイドカード、デビッドカードなどがキャッシュに代わることができる有力候補です。数年前アメリカで、タクシーにクレジットカードが使えるか聞くと、大丈夫だと言われました。しかしどう見ても日本でよく見るカード決済端末らしき設備はありません。結構ボロボロの車でしたが信じて乗車し、降車時に出されたのはスマートフォンとスクウェアリーダーでした。ああ、なるほどと思いつつも、結構至る所で見かけました。スクウェアリーダーは、スクウェア社が開発した小さなICカードリーダーで、スマートフォンのイヤホンジャックに挿して使うことができます。スクウェア社はTwitterの創業者がスターバックスと組んだ会社です。

クレジットカード決済は手数料がかかり嫌がる店舗が多いのも事実です。iPhoneに搭載されたApple Payでは、数パーセントの手数料にしのぎを削るクレジットカード会社の関係をうまく考え、アップル社がインターチェンジフィーから取り分を得たと聞いた時はさすがだと感じたものでした。交渉相手のクレジットカード会社はiPhoneがもつ生体認証による安全度の向上が、クレジットカードを不正利用された補償に比べ安価だと考えたのだと想像できます。同時に追加の負担をお店が強いられなかったことで選びやすい選択の1つとなり、後発ながら参入できたのでしょう。このApple Payの仕組みも面白いので、機会があれば触れたいと思います。

そして今後は手ぶらでクレジットカードが使える方法が日本でも現れるかもしれません。JCBは手のひら画像で本人認証し、VISAは顔認証を利用して、カード自体を所持していなくても決済が可能になりそうです。生体認証は本人そのものなのでIDは不要です。専用の設備が不要で、単にスマートフォンを置いておくだけで実現できるのであればとても便利になることでしょう。

お店では決済行為が結構な負担になっている場合も多く、特に現金は大きな負担です。仮に日本から現金をなくしてしまえば、経済効果や生産性の向上が期待できそうです。実際には難しいでしょうが、今後考えられる労働力の問題を回避するためにも、現金に頼った日本の決済手段を真面目に検討する価値はあります。現に最近では現金お断りの飲食店も登場しています。実現は不可能に近いでしょうが、キャッシュレス社会を想像してみることは面白いと思います。

現在、政府方針で19%程度の日本のキャッシュレス決済比率を今後10年で米国並みの40%まで引き上げを目指しています。ただ海外からの旅行客の増加を考えるとクレジットカードだけではなくアリペイなどに代表されるQRコードを利用した他の決済方法も増えると考えられます。

しかし、どうしても決済方法に目が行きがちですが、世界の潮流は「支払方法」ではなく、「支払いから得られる情報」に価値を見いだすビジネスモデルにシフトしています。手数料ビジネスだけからの脱却も必要となります。また外国人客は自国の決済システムを利用することも多く、決済情報が実際消費される日本に残らない可能性も懸念されます。他方、最近カード会社も統計情報を提供するようになり、少しずつではありますが、決済から得られる情報を活用できるようにはなって来ています。

今後仮想通貨もあいまって決済にかかわるビジネスモデルは劇的に変化していくことでしょう。しかし決済の多様化は連続に変化する社会の延長線にすぎません。笑われるので詳しくは書きませんが、お金そのものに対する価値変化など、本当に驚くべき変化は静かに進行している気がします。昔クレジットカード会社のCMに使われていた「Priceless」というフレーズが妙に気になるこの頃です。いや、これが冒頭で私は「お金のかからない人」であって、「お金を使わない人」だと思われたくない言い訳では決してありませんよ。

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学生の頃、数学と物理学の勉強ばかりしていました。厳密な数学に魅了され、のめり込みました。でも結局利用シーンが想像できないまま熱が冷めてしまいました。その後自然界と密接に絡む物理学こそ求めていたものだとまたまたのめり込みます。これらを生業にしたいと本当に思った時もありましたが、凡人である私ごときにできるわけもありません。その後コンピュータと出会いITが生業となります。そして今、ITをビジネスサイドから見る立場にいます。余談ですが明らかに偏ったこんな私と結婚した妻は、なんと歴女。世界史や日本史ネタでは太刀打ちできません。特にパレスチナ問題に詳しく、先日のトランプ大統領によるエルサレム発言の問題点について妻の講義を30分受けました。

最近、機械学習ブームで数学が注目され、LIGOのノーベル賞[1]から宇宙解明への新たな物理学が注目されています。なんだかワクワクします。IT関連では、世界を変えそうだと言われているブロックチェーン技術には暗号理論が使われており、マイナンバーカードにも利用されているこの暗号は素数や因数分解が駆使されています。また、トランジスターのサイズが物理の限界に近づいた今、物理学と数学の融合のような量子力学を利用した商用の量子コンピュータの登場も大ニュースです。

今回のテーマは「コンピュータではないコンピュータ」です。なにそれと言われそうですが、2つあります。

1つ目は、前出の量子コンピュータです。2014年のアメリカ出張で、たまたま利用した車の運転手が話しかけてきて、私がIT関連の仕事をしていると知った彼は「量子コンピュータを知っているか?」と質問してきました。もちろんD-Wave[2]で名前は知ってはいたものの詳しくは知りませんでした。その運転手いわく、量子コンピュータで有名な日本人が彼の客とのこと。彼が「量子コンピュータって速いの?」とその人に尋ねると「あなたが考える以上に速い」と答えたそうです。私はこの「あなたが考える以上に速い」と言うフレーズがずっと気になっていました。

量子コンピュータとは量子の特性を利用したコンピュータの事です。量子の話をすると、かのファインマン[3]さん曰く「それはミステリー以外のなにものでもない」となりますので、私ごときの説明は避けますが、量子の不思議な特性を利用することで同時に計算できる量を指数関数的に増加させることができ、通常では考えられないほど高速になります。「あなたが考える以上に速い」とは、このとてつもない性能のことを指しています。

すごいコンピュータが実現したのかと思われますが、実はなかなかそう上手くは行きません。量子ビットは増やせば増やすほど驚くほど速くなりますが、量子ビットを使った計算方法には大きく分けて2つあります。量子ゲート方式と、量子アニーリング方式です。量子ゲート方式が今のコンピュータに近い仕組みなのですが、この方式だと50量子ビットの実現がやっとのようです。2,000量子ビットを誇るD-Wave 2000Qは、量子アニーリング方式で実現しています。量子アニーリング方式を大雑把に言うと自然現象を利用して組み合わせ最適化問題などを解く仕組みです。今のコンピュータでは計算が不可能な膨大な組み合わせ最適化問題が解けるようになります。これにより創薬や渋滞緩和などの計算に期待されています。つまり汎用的に使える量子ゲート方式だと量子ビットを増やすことが困難で、量子アニーリング方式だと増やせられるが出来ることが限られます。

今紙面を賑わす量子コンピュータの多くがこの量子アニーリング方式を採用しているため、この量子コンピュータという呼び方に対し、特定の計算しかできないコンピュータをコンピュータと呼んで良いのかとの声があります。今回のタイトルである「コンピュータではないコンピュータ」です。

ではもう1つのコンピュータではないコンピュータとは?「このコンピュータ可愛い」、「あ、コンピュータ忘れてきた」。お分かりですよね「スマホ」です。街角で「コンピュータを持っていますか?」と質問をすればほとんどの人がPCなどをイメージして「持っていない」、「家や会社にある」と答えるでしょう。

しかし、コンピュータではないコンピュータがコンピュータで解けなかった難問を解き、コンピュータと呼んでもらえないコンピュータが人々の生活を激変させています。私はコンピュータとは抽象的なものだと考えていますので、時代や用途とともに姿や方式を変えると思っています。そういえば故スティーブ・ジョブズ氏はiPhone発売当初「専用コンピュータの時代」だと表現していました。

今年も残すところ僅かになりました。毎日が本当に寒いですね。ラニーニャ現象と言われています。皆様お風邪などにお気をつけください。それでは少し早いですが良いお年をお迎えください。

 

[1] 2017年ノーベル物理学賞:レーザー干渉計LIGOを用いた重力波観測への多大なる貢献
[2] D-Wave Systems, Inc. カナダの量子コンピュータ企業
[3] リチャード・フィリップス・ファインマン:アメリカ合衆国出身の物理学者

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画期的な圧縮アルゴリズムを武器に起業し、起訴やM&Aの荒波を乗り越え大企業に挑戦する6人の若者パイドパイパー社。シリコンバレーを舞台にしたコメディータッチのドラマで、名前もズバリ「シリコンバレー」。あまりにもリアルすぎると評判で、私も若い頃夢見たワクワク感が蘇りとても好きです。ネタバレなので書きませんが、シーズン4の最後に主人公が宿敵である巨大企業のCEOに言い放つセリフは必聴です。のっけからAmazonとは関係なさそうな書き出しで恐縮ですが、前回の続きであるAmazonとホールフーズを書きます。

勝手に想像する一つ目のストーリーは吸収です。アメリカでよく見られるM&Aはスピード感があり、システマチックに進む印象があります。買う側は買った会社を完全に吸収しプロセスに組み込んでしまいます。そして完了すると買われた側の経営者は莫大なお金を得て退職します。ペゾス氏はその発言からしてとても合理的な人です。ブルドーザのようにAmazonがホールフーズをプロセスの一つにまで分解し統合し店舗が物流拠点や受け渡し場所とすることでマーケットプレースの空いたピースである念願の生鮮がはまる構図です。先のドラマにもこのようなM&Aはふんだんに出てきます。いずれペゾス氏の謝辞とともにマッキー氏が退職すればこのケースになるかと思います。

もう一つは共生です。キーワードは前回ご紹介した本にある「コンシャスカンパニー」です。コンシャスとは意識が高いと言う意味で、条件としてステークホルダーとのウインウイン関係が必要だと書かれています。顧客、社員、サプライヤーと他の3つを加えウィンの6乗と訳されています。特に顧客、社員、サプライヤーを平等に扱う徹底ぶりは素晴らしいです。理想は分かるがいざ実現しようとなると極めて難しいと多くの企業が感じていることでしょう。給与の考え方一つを取ってもなるほどと思わせるマネージメントを行なっています。反面、よい企業文化が役に立つなどというのは幻想だという意見もあるでしょうが、それを実現し成功している数少ない会社の一つがホールフーズでありCEOのマッキー氏です。なんとなくイメージの違うペゾス氏とマッキー氏ですが、二人には大きな共通点があります。それは徹底した顧客志向です。

先のドラマで主人公とVCの女性がスーパーマーケットで買い物中、同じTシャツを着た人たちが忙しく商品をカートに入れています。ほとんどが買い物請負業者です。彼らを見て、技術力で起業するより、くだらなくてもビジネスモデルで起業すれば投資家の受けもよかったと言う主人公の嘆きのシーンです。

「顧客のニーズを大切にしろ。たとえ気づいていなくても」というペゾス氏の目指す未来は、顧客の潜在欲求に響くショッピング体験かもしれません。機械の領域と人間の領域を分け、買い物を楽しくお洒落にした心地よい世界を目指しているのかもしれません。第2幕ではホールフーズが築いた強い結びつきを持ったサプライチェーン全体をAmazonが持つ技術を使って最適化することは明らかです。しかし最適とは合理化だけの意味ではありません。生産、物流や購買に関わる全ての行為の合理化は当然とし、その上で人々が求めるものと求めないものを区別し、求めないものは再編され、ITやロボットが人々に代わり苦痛を取り除いてくれるでしょう。そして心地よさだけを残します。例えば先のドラマの買い物請負業者に求める行為そのものや、日用品の品揃えだけの商品も不要かもしれません。

時価総額はトヨタの三倍近くの50兆円を超え、驚くべき額を毎年投資する企業。そんな企業が見据える社会とは、生産者や消費者皆が最適な営みを美しく行える未来を見据えている気がします。そしてそれをすでに実現していた会社の一つがホールフーズだったと思います。人と人は簡単に共感できるとは思いません。だからM&Aはとても難しい選択だと思います。しかし提携だと利害が一致せず顧客志向にはなり難いと考えられます。未来のショッピングを作ろうとした場合、顧客の要求を察知し、ともに成長してきたサプライヤー、優秀な社員、店舗立地を既に確立したプロたちとどうしても一緒になりたかったのだと思います。どんな言葉で口説いたのでしょうね。Appleのジョブズ氏がスカリー氏を説得した砂糖水は有名ですが、もし私がペゾス氏なら口説き文句は「人々がまだ気づいていない新しいショッピングの世界を一緒に創らないか」でしょうか。浅いですね。すみません。

ここまでくると当然「反トラスト法」が気になりだします。しかしこの法律は企業の合併などで消費者に不利益になることを制しているため、Amazonのように常に利益を消費者に還元する、すなわち値下げするやりかたには及びません。AWSはなんと60回以上も値下げを繰り返しています。トランプ大統領がAmazonに向けた言葉で話題になった、ペゾス氏はワシントンポストの個人オーナーでもあることを利用しロビー活動に影響を与えていると。いやはや。恐るべし。

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最近よく本を買います。仕事関係を除いても昨年は50冊、今年はまだ半ばですが、昨年を凌ぐ勢いです。老眼との戦いで暫く本から遠ざかっていたのですが、また悪い虫がでてきたようです。本の多くは専門書の類で小説などはほとんど買いません。読書の偏りは認めます。最近思わずポチった「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」を見た妻からは「どこに向かっているの?」と言われ「趣味だから」と言い訳しています。

技術系の仕事をしていると専門書にお世話になります。若かりし頃本屋に行くことが趣味なのかと言われるほど本屋にいました。しかし今では全く行きません。Amazonで買います。口コミ、中身検索や索引で十分立ち読みと同じ効果があります。何と言っても複数の本屋を回らなくても目的の本が見つかります。ここ10年で私にとっての本屋といえばAmazonとなりました。Amazonの話、今頃?と言われそうですが、今回はAmazonです。

本当に面白い会社だと思います。通販で有名になりましたが、IBMを焦らせたAWSや、Appleより先んじたEchoなどがあります。登場した頃はIT企業と思わなかった人の方が多かったのではないでしょうか。今では単なるIT企業ではなく、実際の販売データを保持するクラウドサービスの雄といえます。AWSが利益を稼ぎ、その多くを未来への投資に回しています。驚くべき額ですが・・・

昨年はAmazon GOが注目されました。実験用の路面店です。お店に入り、商品を選び手にとってそのまま店を出る。レジに並ぶことなしに、です。監視カメラが人と行動を認識し自動でオンライン決済が行われます。仕組みは、バックヤードの監視カメラで沢山の店員がお客さまの顔を特定し、手に取った商品を見て、出て行く前に計算しカード決済へ回します。もちろんこれは冗談ですが、最近のAIブームの火つけ役であるコンピュータが手にいれた目、いわゆる画像認識技術を駆使し映像に映る顧客の行動から、手に取った商品までを認識し、精算業務を自動で行なっています。機械が目を持ったことで、人でしかできないと思われていたことを機械が実現した良い例だと思います。

今年驚いたのは、実在の店舗を持つスーパーマーケットの買収です。通販市場は10%ほどといわれており、かねてより残り90%である店舗運営に出ると言われていましたので、それ自体には驚きはありませんでした。しかし、買収金額は驚愕です。約1兆5千億円です。実は私、ある本を読むまでこのスーパーマーケットの名前を知りませんでした。当社のお客様から「その企業名も知らなかったのか」とお叱りを受けそうです。すみません。でも偶然にも購入していた本の中に「世界でいちばん大切にしたい会社」がありました。そうです、Whole Foods Marketについて書かれた本です。読み応えのある本でした。

最近よく騒がれるドライバー不足による宅配危機。その背景にはオンラインショッピングがあり、Amazonの例がよく言われています。通販の決定的なハンディである送料と時間を少なくするためには、当然ながら物流の効率化が必要でしょう。Whole Foods Marketの売りは「自然食品」ですが、なによりもAmazonにとって魅力的だったのは450店舗、自然食品という付加価値を求めるユーザの所得レベル、店舗立地と言われています。特に生鮮は顧客の近くに倉庫を置くことが武器となります。すなわち配送拠点へ買いに来させることが最も効率的でしょう。生鮮を通販社会に持ち込むのではなく、通販で培ったITを駆使し、商流と物流を実際の店舗に持ち込み、通販と店舗の融合と再編を目指すと思われます。その為、店舗に倉庫など物流拠点の機能を持たせる構図は容易に想像できます。加えて、今取り込めていない顧客層を獲得した後は、ITを使ったさらなる利便性を顧客に感じさせ、Amazonの持つエコシステムで魅了していくと考えられます。配送の最適化だけを見ればいずれ自動運転、シェアリングエコノミーやIoTが取って代わるでしょうし、本気になればいつでも参入可能なAmazonにとって、単なる効率化は枝葉末節だと考えられます。

第1回で書きました、顧客の入り口を抑え、既存産業を下請け化するかのような革命がまた一つ現実味を帯びてきました。日経新聞の記事も、“ネット×リアル 生鮮が主戦場、アマゾン「店舗を倉庫に」”でした。異論はありません。もっともだと思います。
しかし私は前出の「世界でいちばん大切にしたい会社」の読者として少し違和感を覚えています。次回、勝手な二つのストーリーを想像してみます。

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前回の映画の暗号解読に使われたベイズの定理とは、確率で自然界の出来事を表わす法則です。
今のAI技術や統計解析を根幹で支えています。このベイズの定理、ビル・ゲイツ氏は「21世紀のマイクロソフトの基本戦略は、ベイズ・テクノロジー」とまで言ったそうです。1991年の一般的なインターネットもスマホもない時代、「ビル・ゲイツは、いつかコンピュータが人間のように見たり、聞いたり、理解できるようになるというビジョンを持っていました」4 。ベイズの定理は異端とされていた時代が長く、それでもその価値に気づきMicrosoftの戦略とまで言い放った感性は素晴らしいと感じます。
ちなみに、AI技術のバイブルの一つとされる本にPRML 5 があります。この著者のC.M.ビショップ氏はMicrosoft Research所属です。Google に押されているイメージはありますが、さすが世界を代表する雄な企業、20年も前に今を想像できていたのですね。余談ですがMicrosoftが手に入れた音声通話ソフトのSkypeは最近まで統計的アプローチをつかって同時翻訳ができていましたが、昨今ニューラルネットワークに変更し飛躍的に性能が伸びたそうです。時代ですね。

しかし、天才の登場を、指をくわえて待っていられません。やはり教育が重要となります。アメリカはオバマ政権時、特に重要な教育戦略にSTEMという言葉が使われました。この単語はサイエンス、テクノロジー、エンジニアリングと数学の頭文字をとった造語です。なぜ数学と思われますが、数学は全てと話せる共通言語です。STEMは企業にも通じるものがあります。
前回、サイエンス=社会目線、エンジニアリング=顧客目線、テクノロジー=技術目線と勝手に定義しました。そして「本質の理解」の難しさは前回の「モンティ・ホール問題」が感じさせてくれました。トリックとまでは言いませんが、このように人間は主観による勘違いが結構あります。やはりバランスの取れた知識を身につける必要があります。

前回から持ち越した進化に必要なもう一つの側面とは、サイエンスを認識し、それを聞き入れる勇気です。ベイズの定理に共通する二人の天才の逸話を例に出しましたが、この二人の後ろには、スティーブ・バルマー社長、イギリスにはチューリング氏の直訴を受けすぐに動いたウィンストン・チャーチル首相がいました 6 。せっかく進化耐性のついた体質が出来上がったとしても進化しようとする方向に動かなければ進化できません。あたりまえです。
繰り返しになりますが、何か仕事と遠い響きあるサイエンス力とわざわざ定義したのはそのカテゴリーを認め、そしてそれが重要なのだと認識するためです。大きな変化は必ずやってきます。でも予測しようとする意思さえあれば予測可能だと思います。
今までは変化の対象を顧客、技術だったところに社会を入れ、日頃からこの3つを考える習慣にしておけば、必ず予見できると思っています。そしてサイエンス力を企業の重要な位置づけにすることで進化できると考えます。大きな変化がおきた時、経営資源が潤沢にある企業は勝ち残れるでしょうがまだまだそんな贅沢な企業も少ないでしょう。実現方法は千差万別ですがコストをかけずとも変化耐性のある組織は作れると思います。

データ活用の時代と言われて久しいですが、まだまだ一般的には明確な方向性が見えない感じがします。まずは必要なことの認識にありますが、サイエンス力が高まれば必要なことも見え、もっと貪欲にデータが必要になると思います。今は成長を支える道具にITが使われています。しかし、いずれこのサイエンスがITの投資領域になるかもしれません。第2回に書きました「AIブーム」もその一つです。

当社の場合、社長の言葉に「時流を追うな、先読みし備えよ」があります。私はこのフレーズがとても好きです。また、この意味の深さを痛感させられています。三つの努力が必要です。今の私の理解は、今起こっている事の本質を正確に理解し、今後の変化を予測する。そしていずれ求められる事を創造し準備しておけと捉えています。いくつかの難しいキーワードがあります。「本質の理解」、「変化の予測」、「ニーズの創造」です。そして、その考えを経営における重要な要素と考える社長がいる事で当社の成長と進化が行われてきたと感じています。サイバーリンクスのフィロソフィーの一つがこの言葉に現れています。

 


4  Microsoft社のブログより
「パターン認識と機械学習」C.M.ビショップ 著
「異端の統計学 ベイズ」シャロン・バーチュ マグレイン 著

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「第2次世界大戦時、一人の天才が戦況を変えた」といえば驚かれるでしょうか。
2015年に公開された映画「イミテーション・ゲーム」の内容です。主人公は、かの有名なアラン・チューリング氏です。現在のコンピュータの創造者でもあり、チューリング・テストを提唱し人工知能の父とも言われています。
映画の中のドイツ側にはエニグマ暗号があり、マニアも楽しめたと思います。私も南アメリカへの出張の退屈な飛行機の中をこの映画のおかげで楽しめました。
歴史的な側面を要約すると、第2次世界大戦中、イギリス軍がドイツ軍の潜水艦に手をやき、敵の通信を傍受するも暗号化されておりお手上げでした。チューリングのチームは不可能と思われた暗号の解読に成功しますが、その事実を敵にばれないように戦う事で戦況を優位に進めドイツを降伏に追いやります。戦後30年間伏せられていた実話です。

さて、今回は企業の進化を題材にしたいと思います。
先日「International Open Data Day in Wakayama」での講演を依頼され、データ時代に企業がどう向き合えば良いかについて勝手な意見を述べさせて頂きました。その内容を元に書かせて頂きます。断っておきますが私は企業コンサルタントでもなければ、その知識も持ち合わせておりません。技術系の戯言と笑納ください。
よく「既成概念を捨て新しい発想を」と耳にします。できたら苦労はないですよね。
数年前にベストセラーになった「ZERO to ONE」1 をご存知でしょうか。日本語サブタイトルは「君はゼロから何を生み出せるか」と言うペイパルの創業者の本です。
進化を「0から1」に例え、「1から10」を成長に例えたいと思います。

私は、企業の成長にはエンジニアリングとテクノロジーが重要だと考えます。
ここでいうエンジニアリングとは、単に工学だけではなく定めた目標に向かって物事を実現する行為全般とし、テクノロジーはマーケティングなども含めた幅広い技術と考えて下さい。新しい企業や事業は創業メンバーの並々ならぬ努力や、素晴らしい着眼が結実し成功します。進化である0から1の誕生です。そして1から10の成長過程に移ります。エンジニアリングとテクノロジーが駆使され、販売力向上、生産力向上、品質改善、コスト削減等が進められます。
しかし問題があります。長く続けばビジネスは大成功ですが、反面長い時間をかけて成長するにつれ人も組織も変わります。10年もたてば成長を目的とした組織になっている事でしょう。成長を支えた人たちは賞賛に値しますが、「既成概念を捨て新しい発想を」と突然求めても現状の否定に聞こえてしまいます。寧ろモラールの低下の恐れもあります。
多くの企画会議を聞いていると、顧客、技術で議論されます。しかし進化が必要な新しい発想が求められる時には、創業者が持ち得ていた社会現象を鋭く把握する目線が抜けています。創業者精神の伝承は重要ですが、経験していないと肌で感じられません。進化に強い組織にするためには、常に社会現象を意識させる習慣付けが重要ではないでしょうか。人は習慣に支配されています。「習慣力の力」2

では社会現象把握力とは、独断と偏見でサイエンス力と定義したいと思います。
ここで言うサイエンスとは、社会や自然界で起こっている事を「正しく理解」する事です。世界が待ち望んだヒッグス粒子の発見やノーベル賞のブラックショールズ方程式などの、人類にとって大きな発見、発明だけの意味ではありません。
戦時に生まれたOR 3 が近いと思いましたがこれはツールです。

冒頭の映画では、エニグマ暗号の解読にベイズの定理が利用されました。近年注目を集めている確率法則です。
ここで確率のお遊びを一つ、「プレーヤーの前に閉じたドアが3つあり、1つのドアの後ろには車が、2つのドアの後ろにはヤギがいます。プレーヤーは車のドアを当てると車がもらえます。プレーヤーが1つのドアを選択した後、ドアの後ろを知っている司会者が残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せます。ここでプレーヤーは、最初に選んだドアを変更してもよいと言いわれます。
プレーヤーはドアを変更すべきでしょうか?」有名なモンティ・ホール問題です。
「残った扉のどちらかに車があるのだから、どちらも確率は同じ1/2」と感じますが、答えを言うと変更すべきです。変えると勝率が2倍になります。
どうですか、直感とのズレを感じますか?複雑な社会現象を正しく理解する事はとても難しいと感じます。

第一回目に書きましたが、今「革命」と思われる大きな社会変化が訪れています。
まさに進化が求められているのではないでしょうか。
次回は、ベイズの定理で共通するもう一人の天才と、進化に必要なもう一つの側面に触れます。

 


1 「ZERO to ONE」 ピーター・ティール with ブレイク・マスターズ 著
2 「習慣の力 The Power of Habit」 チャールズ・デュヒッグ 著
3  オペレーションズ・リサーチ

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AIブームです。
Gartner社のHype Cycle for Emerging Technologies, 2016 にもMachine Learningが期待の頂点にあります。今後はブームが去り、また冬の時代に向かうのでしょうか。そうは思いません。なぜなら、このブームの背景にあるAI技術が本物だからです。長年の研究成果をITの進化が実証し、その価値を市場が認めました。あと数年もすればAIという言葉は出なくなるかもしれませんが、多くの製品に応用され当たり前になっていることでしょう。

では今話題のAIとはいったい何なのでしょうか。
ITに限って言うなら、数理技術の機械学習領域のプログラムです。昨今、ディープラーニング(深層学習)が話題を呼び、一気にAI技術が注目されました。

ではそのAI技術はなぜ注目されているのでしょうか。
特に注目されたのは画像処理の性能です。例えば写真に写っている物体の認識です。ディープラーニングはこの物体の認識に人間に近いかそれ以上の性能を出しました。さらに驚きなのは、認識に必要な特徴を見つけるのに人によるプログラムではなく、多くのデータから自動で学習したことです。人間にできてコンピュータには難しかった大雑把に認識する力を得ました。この特徴を自動で見つける方法は映像、音声や文章だけにとどまらず、様々なデータに応用する事ができます。人間には見つけることの出来なかった、データが示す意味を見つける事もあります。今までコンピュータが踏み込んでいなかった分野に応用されブームとなっています。面白いですね。正確なはずのコンピュータが「多分」と答えるのですから。でもこれは、本当に大きな出来事です。さらにインターネットによる情報共有の速さや、実装の多くがOSS(オープンソースソフトウエア)で提供されている事が利用を後押ししています。

ただAIについて気持ち悪く感じられる方もおられるかもしれません。でも私たち人間は、空を飛ぶために鳥を作ったりはせず、似ても似つかぬ飛行機を作りました。それと同じで現在実用に向かっているAI技術は、脳を作っているのではなく、脳の機能の一部をITで模しているだけです。IA(知識増幅)やコグニティブ(認知)と表現する企業もあります。

長くなりましたが、当社の取り組みについて触れます。昨年、当社のデータセンタにスーパーコンピュータが加わりました。スパコンです!ただこのスパコン、今までと少し視点が違います。AI技術の中核であるディープラーニングはテンソル(多次元行列)計算がほとんどです。膨大なデータを高速に学習させるためには、行列演算に強いGPGPUがたくさん必要です。しかしディープラーニングはあまり高精度な演算は必要なく、スパコンで一般的な64ビットの倍精度より、16ビットの半精度でも十分な効果が得られるとされています。半精度でビット長が短くなった分、さらに高速に計算できるようチューニングされています。

当社のクラウドには、膨大なデータの蓄積と、それを扱う超高速な分散データベースや分析に強い分散メモリーシステムがあります。そこに今回このスパコンで超高速な行列演算機能が加わりました。これらを全て自分たちで構築しています。当社のような民間企業が単独でスパコンが買える時代になったと考えると驚きです。

これで当社はエンタープライズ領域でのビッグデータをも分析できる技術と設備が整いました。これを利用する具体的な話として昨年、和歌山県より「平成28年度先駆的産業技術研究開発支援事業」に採択されました。現在、当社の主力ビジネスである食品流通業界様向けの「人工知能(AI)を活用した流通向け自動発注システムの研究・開発」を進めています。

当社はクラウドサービスを提供する会社です。お客様の大切なデータをお預かりしております。ブームだからとかでAI技術に飛びついているのではありません。お客様にデータから新しい知見を得ていただかなければなりません。長年分析サービスを手がけていた事もそのためですし、投資もデータ分析に関わる分野に力を入れてきました。AI技術も当然この延長にあり、数年前から取り組みを開始しております。

日本は類稀なる労働力人口の急激な減少が進んでいます。多くの職場で人手不足は深刻です。よくAIは人から仕事を奪うと言われますが、現在のAI技術では人の持つ機能の一部を人間と同等かそれ以上に高めているだけです。しかし今後は人でしかできない仕事の一部を機械に行わせないと仕事が回らなくなる時代が来るかも知れません。

当社はより高度なITサービスを安価に提供することが使命だと考えています。これからも時代の変化を見据え、より良いサービスをいち早く提供できるよう新技術を取り入れ最新のサービスを提供してまいります。

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デジタル革命が起こっています。えらく物々しい響きですが、ITの潮流の一つです。何が革命なのでしょうか。
世界的にはUberが有名です。配車サービスですが、既存のビジネスモデルを覆し、大ヒットとなりました。スマートフォンで行き先をタップすると、現在地まで迎えに来てくれて目的地まで送ってくれます。支払いは事前登録のクレジットカードで自動的に支払います。目的地を説明する必要もなく、支払いのチップを気にする必要もありません。簡単で透明性がありとても便利です。私も海外出張時はよく利用します。単なるスマートフォンを使って運転手と乗客を直接結びつけた仲介業(マッチングビジネス)です。これが革命?と思われる方も多いと思いますが、今年の初めサンフランシスコ最大のタクシー会社が破産に追いこまれました。

タクシー事情が良い日本ではUberはあまり馴染みがないので、別の例を書きます。昨今、海外からの旅行者の急増により宿泊施設の不足が言われています。解決策の一つとして一般の民家に泊まる「民泊」という言葉をよく耳にします。その民泊で注目されるのがAirbnbという会社です。スマートフォンを利用して、空いている部屋を貸したい人が情報を提供し予約ができるサービスです。日本では来日する多くの外国人を中心に利用が広がっています。これも先ほどのUberと同じようなモデルで、宿泊を希望する人に空いている部屋を仲介するビジネスの一つに見えます。
今年世界最大のホテル企業になったマリオット・インターナショナルは世界中で110万室を持った業界のトップです。Airbnbは登録部屋数が約80万室で、なんとヒルトンやインターコンチネンタルと肩を並べています。しかし、ちょっと待ってください。なぜ仲介ビジネスと実業を比べるの?と言われそうです。
彼らのビジネスモデルは、利用者との入り口にスマートフォンを利用し、提供者と利用者を直接橋渡しし、お金の業務を代行します。そうです、彼らはホテル企業やタクシー会社を仲介していないのです。Airbnbは現在1,000億円ほどの売り上げがあるそうです。本来ホテル業界が得る可能性のあった収入が奪われたことは明らかです。Uberがタクシー業界から反発を受けたように、Airbnbも多くのホテル業界から反発を受けています。
見る角度を変えてみましょう。仮に、彼らが最初から「世界最大のタクシー会社になる」とか「世界最大のホテル企業になる」という戦略を持っていたとしたらどうでしょう。ビジネスモデルを考え、戦術をうまく遂行してきた結果としたら。例えば、ホテル企業になるにはホテルを建てることだと考えずに、宿泊サービスを提供することをシンプルに突き詰め、世界中で安く簡単に予約ができる宿泊サービスを目指していたとしたら。物から事の時代と言われる昨今、この考え方が革命の意味だと思います。

誰が革命を起こし、誰が攻め込まれるのか。ITを武器に他業界から既存の業界に踏み込んでくる構図です。最初は安かろう悪かろうのイメージがあるかもしれません。また、マーケットプレースや紹介サイトのように仲介業に見えるかもしれません。強敵とはとても思えません。ただ規制や常識にとらわれず、利用者目線で「事売り」で攻めてきます。昔読んだ本に「イノベーションのジレンマ」がありますが、その例にとてもよく似た構図です。
加えて、これらを実現するための技術は一般的なものが多く、ある程度の知識、スマートフォン、インターネット、クラウドコンピューティング等の開発知識があれば誰もが実現可能です。また開発、維持、運用コストが従来に比べ圧倒的に低く、荒っぽく言えばアイデア次第です。スマートフォンの普及率が示すように、現在人々はスマートフォンと言うコンピュータを持ち歩いています。さらにそれに頼りきっています。このことがデジタル革命を後押しし、今後も至る所で起こると思われます。

決して攻め込まれた業界が怠けていたわけではないと思います。しかしコンシューマとコンピュータが一体化したがために、顧客の要求がダイレクトに吸い上げられる時代への対応は急がなければならないと感じます。また逆に、これを一過性の現象と評する人もいますが、さてどのように時代は動くのでしょうか。
私は技術を担当しておりますが、今回はビジネスモデルの話になってしまいました。今、デジタル革命、デジタル・イノベーション、デジタル・ディスラプター、デジタル・トランスフォーメイション等、同じような言葉がよく使われています。ITの流れでとても大きな潮流の一つであるため初回の内容とさせていただきました。今後もできるだけ最近のITトレンドに加え、当社の取り組みに触れていきたいと思います。