「あなたは本当にお金のかからない人ね」と妻に言われます。着るものや持ち物にこだわるでもなく、良い車を欲しがるでもなく、ただ趣味の本さえ買えていれば文句を言わない、そんな私への妻の感想です。心のうちでは「もう十分やんちゃはやりきりました」と思いつつ決して口には出せません。日本人として“世界でいちばん貧しい大統領”ホセ・ムヒカ大統領の美徳を失ってはいけませんよね。さて、2018年最初のブログとなります。いつまでネタが続くかはわかりませんが、今年も頑張ってまいります。
今「お金」が話題となっています。仮想通貨の話ではなく「キャッシュ(現金)」です。政府の「日本再興戦略」がベースとなり、世界屈指の現金大国日本もオリンピックまでにキャッシュ依存率を下げようと動き出しています。
キャッシュ依存率を下げるには色々な決済方法が必要となります。クレジットカード、プリペイドカード、デビッドカードなどがキャッシュに代わることができる有力候補です。数年前アメリカで、タクシーにクレジットカードが使えるか聞くと、大丈夫だと言われました。しかしどう見ても日本でよく見るカード決済端末らしき設備はありません。結構ボロボロの車でしたが信じて乗車し、降車時に出されたのはスマートフォンとスクウェアリーダーでした。ああ、なるほどと思いつつも、結構至る所で見かけました。スクウェアリーダーは、スクウェア社が開発した小さなICカードリーダーで、スマートフォンのイヤホンジャックに挿して使うことができます。スクウェア社はTwitterの創業者がスターバックスと組んだ会社です。
クレジットカード決済は手数料がかかり嫌がる店舗が多いのも事実です。iPhoneに搭載されたApple Payでは、数パーセントの手数料にしのぎを削るクレジットカード会社の関係をうまく考え、アップル社がインターチェンジフィーから取り分を得たと聞いた時はさすがだと感じたものでした。交渉相手のクレジットカード会社はiPhoneがもつ生体認証による安全度の向上が、クレジットカードを不正利用された補償に比べ安価だと考えたのだと想像できます。同時に追加の負担をお店が強いられなかったことで選びやすい選択の1つとなり、後発ながら参入できたのでしょう。このApple Payの仕組みも面白いので、機会があれば触れたいと思います。
そして今後は手ぶらでクレジットカードが使える方法が日本でも現れるかもしれません。JCBは手のひら画像で本人認証し、VISAは顔認証を利用して、カード自体を所持していなくても決済が可能になりそうです。生体認証は本人そのものなのでIDは不要です。専用の設備が不要で、単にスマートフォンを置いておくだけで実現できるのであればとても便利になることでしょう。
お店では決済行為が結構な負担になっている場合も多く、特に現金は大きな負担です。仮に日本から現金をなくしてしまえば、経済効果や生産性の向上が期待できそうです。実際には難しいでしょうが、今後考えられる労働力の問題を回避するためにも、現金に頼った日本の決済手段を真面目に検討する価値はあります。現に最近では現金お断りの飲食店も登場しています。実現は不可能に近いでしょうが、キャッシュレス社会を想像してみることは面白いと思います。
現在、政府方針で19%程度の日本のキャッシュレス決済比率を今後10年で米国並みの40%まで引き上げを目指しています。ただ海外からの旅行客の増加を考えるとクレジットカードだけではなくアリペイなどに代表されるQRコードを利用した他の決済方法も増えると考えられます。
しかし、どうしても決済方法に目が行きがちですが、世界の潮流は「支払方法」ではなく、「支払いから得られる情報」に価値を見いだすビジネスモデルにシフトしています。手数料ビジネスだけからの脱却も必要となります。また外国人客は自国の決済システムを利用することも多く、決済情報が実際消費される日本に残らない可能性も懸念されます。他方、最近カード会社も統計情報を提供するようになり、少しずつではありますが、決済から得られる情報を活用できるようにはなって来ています。
今後仮想通貨もあいまって決済にかかわるビジネスモデルは劇的に変化していくことでしょう。しかし決済の多様化は連続に変化する社会の延長線にすぎません。笑われるので詳しくは書きませんが、お金そのものに対する価値変化など、本当に驚くべき変化は静かに進行している気がします。昔クレジットカード会社のCMに使われていた「Priceless」というフレーズが妙に気になるこの頃です。いや、これが冒頭で私は「お金のかからない人」であって、「お金を使わない人」だと思われたくない言い訳では決してありませんよ。