長い間さぼっておりました。お叱りも頂き反省しております。申し訳ございません。その間、令和は、オリンピック、パンデミックと慌ただしく始まりました。石原さとみさん主演のヒットドラマ、アンナチュラルを覚えておられますか。初回の内容がコロナウイルスによる院内感染でした。医療現場にかかわる皆様には本当に頭が下がります。私事ですが息子が小学校に入学できず(入学式が行われない)、教育とコロナ騒動も経験しました。義務教育という、親ですらも奪うことのできない権利が脅かされたことには少々憤りを感じました。また「ハンコ」も注目されましたよね。リモートワーク中にハンコをつくためにわざわざ出社しなければならない問題です。
電子署名法が施行され約20年、電子的なハンコも法的な根拠を得られるようになり電子契約などが可能となりましたが、紙の契約はいつまで経っても無くなりません。紙のコストは無視されますし、ハンコも普通に会社にあります。権力の象徴のように感じている人もいるかもしれません。電子文書に電子署名をすれば管理コストは下がりそうには思いますが、IT機器やソフトウェアがまだまだ使い辛かったことや、電子証明書は有料で維持コストがかかり、組織変更などによる権限の変更など、運用面のわずらわしさも考えると電子化するメリットが見当たらないのが本音でしょうか。
しかし大量に契約行為が必要な企業や、紙の保存を無くしたい企業たちから徐々に受け入れられはじめました。特にここ数年はe文書法により紙の原本性が電子データに移転できるため大きな進展がありました。日本はITで世界に遅れを取っているため、政府も「官民データ活用推進基本法」で本腰を入れ始め、昨年の「デジタル手続き法」につながります。そして、菅氏の「デジタル庁」発言にまでつながってきます。たった1枚の書類にハンコを押すために出社となれば笑えない話です。
従来から、電子のハンコである電子署名を社会で利用するための仕組みとして公開鍵認証基盤(PKI)があります。世界も政府も民間も利用する巨大な枠組みです。しかしその安全性を担保するためにそれなりの維持コストをかけています。特に信用の基点(トラストアンカー)が重要です。悪い人に他人の証明書を与えてしまっては良くないですよね。審査を厳密に行い発行しなければなりません。
この審査を行うのが認証局で、特に認定認証局と呼ばれる機関は国の認定を受けています。電子署名法上必ずしも認定を受ける必要はありませんが、訴訟になった場合、認定機関であれば一定の安心が得られます。しかしス ピードやコスト面でやや重厚感は否めません。
今の時代、直ちにサービスを受けたいなど、スピード感が重要です。もっと簡単にクラウドで完結できないものかとの要望に、電子契約のクラウドサービスが台頭してきています。この方法だと安価なサービス提供が可能です。スピーディでサービスが一体なのでわかりやすさがうけています。しかし電子署名法上あやふやな点があり、国も正式見解を出すなど新聞でも物議を醸しました。サービスが乱立し認定制度もありませんので、リスクは利用者が見極めなければなりません。法律上正しく運用されているのか、もしそのサービスが終了しても契約書は有効なのかなどです。その見極めが利用者に求められているのが難点です。
どちらの方法もとても有用なのですが当社は第3の方法を視野に入れてきました。法的リスクがなく、スピード重視、クラウドサービスに利用可能で、加えて最も重要なのが「安いこと」。そんな便利な方法がないものかと検討していました。
マイナンバーカードと聞くと何を連想しますでしょうか。国のサービスを受けるためのカードとか、大切な個人番号が記載されているとかでしょうか。来年には健康保険証に利用でき、今後運転免許証やパスポートへの利用も検討されている、国が住民に無償提供するプラスチックカードです。安全性はICチップと言う小さなコンピュータが担保しております。このICチップの中に「公的個人認証」と言われる、電子証明書が入っています。しかも無償です。加えて受け取り時に本人確認がされており、写真もあることから、先の信用の基点には申し分ありません。ここに注目してきました。
この公的個人認証を使って「マイナンバーカードでハンコが押せる」のです。しかも最近ですとスマホにタッチするだけでできるのです。よく勘違いされているのですが、個人番号ことマイナンバー(カードではない)ですが、これは国民に既に付与された番号で、税と社会保障に限定した使い方が想定されております。ここが重要なのですが、公的個人認証にはこの個人番号は記載されておりません。電子証明書は個人番号とは全く関係なく、もちろん国がその利用を管理することもできません。
公的個人認証という電子のハンコを使う方法、これが、当社が選択した第3の方式です。この可能性から、当社は、公的個人認証サービスにおける総務大臣認定と、時刻認証業務の認定事業者資格を2017年に取得しておりました。
ただ、これだけですと社会活動に使うには不便です。マイナンバーカードといえば個人カードのイメージが強くありますが、個人といえども属性があります。私は2児父親という属性と、サイバーリンクスの社員という属性。また機能であれば自動車を運転する技能を持ちます。人間は社会と属性で繋がっています。属性は社会の一員であることを証明してくれます。普通、契約には、どこそこ企業のなになに部長であるなど、社会での肩書きを使って行います。そのような社会の肩書きを証明してくれるのが、当社が7月に取得したもう一つの国の認定である「電子委任状取扱事業者」です。
委任とは権限を委任することなので、委任行為ではその人の持つ属性情報、例えば会社の役職や士業としての資格が必要となります。そして、電子委任状では、その「属性」の証明に公的個人認証を使うことができます。この電子証明書と属性がセットになれば、社会カードとして位置付けることができます。
この「電子証明書と属性を紐付け、社会カードとして位置付ける」ことの意義はとても大きいと思います。
一般的に、契約書は「代表取締役(社長)」が契約当事者として記名押印していることが多いと思いますが、実際の代表者印の管理や押印は、管理部門の担当役員や部長が委任されていることが多いのではないでしょうか。
これまでは、代表者印は「1つ」で、「施錠された場所で、委任された人がちゃんと管理している」ことで信用を担保していた「押印」が、社会活動のオンライン化が進めば、誰が社長に代わって押印(電子署名)しているかが不確かなものとなってきます。
代表者に代わって、会社を代表して契約行為を行える権限を委任された人であることを証明するのが「電子委任状取扱事業者」です。今後重要な役割を担っていくことでしょう。
税金を使って発行するマイナンバーカードの短期的なメリットばかりに議論が及び、大きなビジョンが霞んではいけません。1億人超の住民がICチップにはいった電子証明書を無料では配布された国は世界中でありません。今後日本が克服しなければならない生産性の低さの打開、人口減による労働力の低下、高齢化社会に於ける保障の充実も、直接給付などセーフティネットの問題も地方自治体の負担をしいるだけではなりたちません。奇しくも特定給付金で露呈してしまいました。
プラスチックカードは時代遅れだと言う人もいます。当社本社が位置する和歌山県は南海トラフに近く、災害に対して強い危機意識を持っています。ITに不慣れな人も、年配の人も、電源や水没を考えると、財布にはいるプラスチックのICカードは人間とITを迅速に繋ぐ道具として暫くは必要です。いずれは生体認証なども一般化し、デジタル的なIDと生体認証をあわせることで属性の証明が可能となれば、時間と場所に関係なく、個人が国に管理されず自分が選んだサービスを手ぶらで利用できる社会がくるかもしれません。
超効率化社会を目指さないと人口減に悩む国の生産性はあがりません。でもそれは人件費カットとか経費削減とか人に痛みを強いるところではありません。Society5.0で目指す国の姿を支えるインフラとして、本当の無駄(時間の拘束、場所の指定、紙、物)にかかる会社、業界や社会維持コストをITで削減し、この分野でのリーディングカンパニーを目指したいと思います。当社代表の言葉に「時流は追うな。先読みして備えよ」そんなIT会社の次なる挑戦の始まりです。