第1回 食品部門「ひと工夫で売上・利益向上」大作戦!

本サイトにて小売支援企業、実際の小売現場において取組んだ様々なデータ活用に関する事例などを連載してゆきたいと思います。

時代はIT(information technology)から、ICT(Information and Communication Technology)と進化しています。
流通業界においても、情報は単に情報のままで済ますのではなく、具体的に活用し、さらにそれを繋げ、広げてゆく活動が求められています。

サイバーリンクスのクラウド型本部システム@rmsの分析ツールにおいて、導入したシステムをどのように活用しながら業績向上に繋げていったらよいのか!?
その手助けになれば幸いです。

第1回目は、クラウド型本部システム@rmsのオプション機能である「基本帳表作成ツール」と「MDツール」を活用し、加工食品部門や雑貨部門など、比較的在庫期間の長いドライグロッサリー部門で「データ活用」を実行し、売上・利益を向上するための手法について、実例を元に、順を追ってご紹介します。

なお、今回取り上げた店舗では、一年間で売上高30%アップ、粗利益率3.5%アップを実現しています。

「データ活用」と一口に言っても、人によって色々な捉え方があると思います。
「データ」=数値ですね。では、「活用」について皆様どのようなイメージをお持ちでしょうか。

情報系のシステムが社内に導入されていれば、とりあえずは、店舗、部門、単品の実績が確認できる事でしょう。毎日それらを確認しながら、悪いところを探して改善を実施している熱心な担当者の方もいらっしゃると思います。
数字を見ながら何かに気づき、次の行動に移す、まずはそれが「活用」の出発点です・・・が、さて、問題はその後です。
たまたまその時の改善できることはあっても、それが毎回のように継続することが難しく、長続きしないといったことも多いのではないでしょうか。
実にもったいない話です。
そこで、私共が支援するとある企業で、加工食品売場担当者の普段の何気ないデータの確認作業にひと工夫加えてみました。

そのひと工夫こそ「データの管理手法化」です!

文字だけでは何のことだかわかりにくいかもしれませんが、簡単に言うと、
「数値確認からの一連の流れをPDCAサイクルにしちゃいましょう!」
という事です。

今回の事例に限らず、「データ」を「活用」する成否は、言ってみればこのPDCAサイクルを如何に組み立てる事ができるか!?という事にかかってきます。
※PDCAサイクルとは、P=計画、D=実行、C=検証、A=行動を繰り返し行いながら実績や行動を「管理」する手法の事です。「管理」とくれば「PDCAを回す」が基本です!

さて、手順化の流れを実例で確認してゆきましょう。
<図1>

●現状分析
まずは現状の数値確認を行います。
今回の店舗(以下A店)の加工食品部門では、店別の売上高昨年比、および、粗利益率に着目しました。

【画面1:基本帳表作成ツール>月次実績推移表 売上高昨年比の例】

【画面2:MDツール>売上分析チェッカー 店別部門別みなし粗利率の例】

※上記はデモ画面のため架空の数値が入っています

実績の推移と店舗間比較によって、A店加工食品部門の売上高が昨年比70~80%と低迷し、同時に粗利益率も他店と比較して2~3ポイント低くなっていることを確認しました。
分析時点で、2年間ほど競合店対策を続けていたため、その影響が色濃く出ていました。

●改善策の立案
現状分析から、加工食品部門の売上と利益を改善してゆきたい、とわかったわけですが、その為にどのようなアプローチをしてゆくかを検討します。
売上を分解すると客数×客単価になりますが、今回は加工食品部門だけの取組なので、客数を増やすことは難しいため、客単価、さらにそれを分解して、特に販売数量の向上を狙うことにします。
利益の方は値入ミックスの考え方を組み込むことにします。
まず、商品を定番、低値入、高値入(高付加価値)の3つにグルーピングします。
この企業の加工食品部門では、定番商品や低値入の広告商品等は主にバイヤーの権限で品揃え、売価ともに決定されるため、その中でも、比較的自身で選択しやすい高値入の商品について販売強化を行うことにします。取組むことで、お客様への新たな提案も増え、お役に立てる場面も増えそうです。

改善策は、簡単に言ってしまうと「高付加価値商品を売り込む!」となりますが、その狙い所が明確になりました。狙い所の明確化は「管理」に必要不可欠です。

●計画要素とKPI(数値目標)の設定
PDCAを回すわけですから、P(計画)が無ければ話になりません。
売り込み計画に必要になる要素は大きく以下の3つです。

どこで誰に : 売場計画
→ 売場レイアウトからエンド、ステージを書き出し、月の前後半で大枠どんな売場を作るか計画する。 例:レジ前ステージ、前半:新商品フェア、後半:高付加価値売場 など

何をいくらで : 商品計画
→ 昨年の次月の売上:利益マトリクスABC分析から、売り込むべき単品を決定する

【画面3:MDツール>ABC分析チェッカー>カットアイテム抽出】

・どのように : 販促計画

→選択した商品にあわせて、販促手法を計画します。大量陳列、関連陳列、売場装飾、アナウンス・告知、販促物、コトPOP内容など

そして、PDCAのC(検証)に必要なKPI(数値目標)は、色々と試した結果、計画した高付加価値商品の売上構成比(10%以上)と粗利益率(28%以上)、この2つに絞り込みました。

<写真:計画して作成した売場の例>

●管理サイクルとチェックポイント設定
加工食品部門の特性にあわせ、KPI(数値目標)の検証期間は月単位に決定します。
ただし、途中経過は週単位で確認し、問題があれば単品レベルまで確認してゆきます。
ここで重要な点は、週単位の途中経過確認時点で目標達成に問題が生じていると判明した場合、商品の変更や売場の変更など、対策を積極的に行動に移すことです。
それこそがPDCAのA(行動)の部分となり、結果を左右する重要な要素になってきます。

●マニュアル化と横展開
うまく行ったら一連の流れをマニュアル化し、多店舗展開を狙います。
実際にマニュアル化したものをこちらに公開します。(高付加価値商品売込マニュアル

目標数値ややり方を改変すれば、様々な業態、部門で活用が可能だと思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。

いかがでしたでしょうか。
これが実現できれば効果絶大です。
@rmsの分析ツール「基本帳表作成ツール・MDツール」は、情報を確認するだけでなく、活用するための必要な機能が誰でも簡単に利用できるクラウドシステムです。
ユーザー企業様では、パートの方から経営者まで、従業員みんなで使いこなし、活用して頂いております。

A店ではこの取り組みを一年間継続することで

【加工食品部門】
売上高昨年比 72% → 101%
粗利益率 15% → 18.5%
となりました。
そして、数値よりもなによりも、功績を上げることで担当者のモチベーションが向上し、それが波及して企業内がピリッとしてきました。そこから更なる取組に繋がることで、企業全体の士気や風土が向上することこそが最大の効果かもしれません。

さて、一度あなたの企業の加工食品部門に置き換えて計算してみてください。

加工食品売上高 × 3.5% = 粗利益高改善額
+企業風土の向上

早速はじめてみませんか!?

 

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。