第9回 値入ミックスによる利益コントロール②


 今までは主に売上をどう高めてゆくかと言う観点でデータの見方をご紹介してきましたが、今回と次回は、値入ミックス手法とアームズを使いながら、各部門の利益コントロールを行ってゆく方法を考えてみましょう。

 今回は前回に引き続き、値入ミックスの具体的な活用方法について解説してゆきます。

1.利益コントロールの方法

 前回は、商品を3つのグループに分けて考える方法をお伝えしました。(図1)
では、トータルの利益率を目標利益率に近づけるために、何ができるかを考えてみます。

図1.値入ミックス表

(1)利益構成を変化させる
 それぞれのグループの構成比が算出されています。トータルの値入率はこれらの構成が変わると当然変化します。値入率の高いグループの構成比が高くなればトータルの値入率も高くなるし、構成比が低くなればトータルの値入率も低くなります。
 逆に、値入率の低いグループは構成比が高くなればトータル値入率を下げる要因になり、低くなれば高める要因になります。

 という事は、今よりも値入率を高めようと考える場合、売場づくりを行う際には値入率の高いグループの構成比をどう高めるか!?という視点を持てばよいことになります。

では、そのためにはどんな方法が考えられるでしょうか。

・特売商品の横に高値入商品を関連陳列する
・品質POPでアピール力を高める
・コーナーを作ってみる
・試食販売を行ってみる
・大量陳列を仕掛ける
など・・・

 高い値入の商品は、あまり有名ではないものも多いため、その価値をどのようにお客様に伝えてゆくのか、と言う点が重要です。また、売り込みたい商品選定のポイントは、売り手が「美味しい」「お値打ち」と心から思えるような、本当のおすすめ商品を選ぶことです。

 他にも戦略的な手段としてはチラシ回数を減らす、特売回数を減らす等も、利益構成を変化させる大きな要因となります。

(2)値入を見直す
 構成比をコントロールする以外でトータルの値入を高める方法としては、値入そのものを見直すことが考えられます。 そしてその方法は「売価を上げる」もしくは「原価を下げる」そのどちらか、あるいはどちらも、となります。

「売価を上げる」方法をとる場合は客離れをおこなさいよう、入念な競合店売価調査を行うなど、慎重さが求められます。
「原価を下げる」方法は商談をして原価交渉を行うか、代替品に切り替えるなどの方法になります。多くはバイヤー業務の中で取組む事になります。

 値入を見直す方法は、どちらも店舗側では実施できない事が多いと思われますので、現実的な実施方法としては(1)の構成を変化させる方法がメインとなるでしょう。

2.目標設定

 値入率はどこまでも高められるものではありません。低すぎても高すぎても問題が生じます。適正な値をどこに持ってゆくのかは、会社の方向性が大きくかかわってきます。例えば、ディスカウントスーパーと高質スーパーでは、目標とする値入率が大きく異なるだろうというのは容易に想像できます。
 とは言え、何が適正か見極めるのは難しいものがあります。しかし、ある程度現状がわかれば、目標が立てやすくなります。

 まず、部門単位で目標利益率を設定し、どのような構成にデザインするか図1に目標値を落とし込んでゆきます。こうすることでどの部分をどれだけ高めればよいか(あるいは低下させればよいか)わかるようになります。

 あとは現場でPDCAを繰り返しながら、1で述べたような方法を駆使しながら目標値を目指して取り組みます。その際注意すべき点は、シーズンや競合店等、外部環境の影響に応じて目標を適時見直しかけ、固定してしまわない事です。

その取組の中で良い取り組みが行えた場合は、事例としてまとめ、社内で共有してみましょう。

次回はより具体的に生鮮部門での値入ミックスについて解説します。

図2.事例の共有

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。