第6回「目標を達成するために問題点を発見し課題を設定しよう!」

第6回「目標を達成するために問題点を発見し課題を設定しよう!」

チェーンストアの現場を運営してゆく上で、最終的に重要となる数値は毎期の営業利益となるでしょう。アームズ上で各店の売上と粗利益が随時確認できるようになると、目標とする利益額に対してどの程度の進捗で進んでいるのか、また進捗の悪い店舗や部門はどこであるのか、すぐにわかるようになります。

数値管理の方法は企業文化に依る部分も多く、各社まちまちですが、チェーンストア経営において基本的な考え方の部分は概ね同様であると思われます。今回はおさらいの意味も含めて、問題点抽出の基本を確認してゆきましょう。

【 問題点の抽出と課題の設定 】

具体的な数値の見方に入る前に、「問題点」と「課題」について、その違いを認識する必要があります。普段、現場ではこの二つの言葉の違いはあまり意識されずに使用されている場合が多いと思いますが、それぞれ明確に異なる意味を持っています。

「問題点」とは目標を達成しうる「ありたい姿」に対する「現状の姿」との間のギャップ(差)を意味します。

「課題」は問題点を解決するためのなんらかの方策の事を意味します。
(参考 図1:「問題」と「課題」の関係性)

チェーンストアにおいて目標は端的に数値で表されることが多いでしょう。ただ、その数値目標を達成するために必要とされる状態は明確に示されたり示されなかったり、企業によって異なるでしょうが、なんらかのイメージはあるはずです。

例えば、目標の利益率を達成するための商品構成、鮮度管理、売価や値入設定、プロモーション、売場管理・・・等々、いわゆるあるべき姿のようなものです。

目標数値に達成しなかった場合に、では具体的にあるべき姿と現状のどこに差があったのか、これを探し出す行動が「問題点の抽出」です。

問題点は一つであるとは限りません。むしろ複合的に複数の問題点が絡み合って結果として目標に届いていない場合の方が多いことでしょう。それらの問題点をどのように解決してゆくのか、その方法を考えることが「課題の設定」です。

注意が必要なのは、問題点一つに対して課題が一つという単純な1対1の構図ではなく、複数の問題点を同時に解決できる方法を課題として設定する必要がある点です(参考 図2:複数の問題点に対応する課題の設定例)。

設定される「課題」も一つとは限りません。場合によってはいくつかの越えなければならない課題があるかもしれません。次に考えるのは、それらの「課題」をどのような順番、タイミングで実行してゆくか、その「変革のシナリオ作り」です。「アクションプラン」と言い換えても良いでしょう。

この目標設定から変革のシナリオ作りまでの一連を経たものが「戦略」です

 

【 着眼大局、着手小局 】

データ分析を行う上で必要な心構えは「着眼大局、着手小局」です。これは、まず全体を捉え、改善すべき点を絞り込んでゆく、ということです。細かい部分に囚われて片っ端から問題を片付けようとしても、それが全体に対するインパクトがどのくらいなのかがわかっていないと、骨折り損のくたびれ儲けとなりかねません。

分析ツール上では、最も効果的な施策を行うためには全体を俯瞰しながら問題のある部分を絞り込んでゆくために、ドリルダウンという機能があります。

図3では、昨年売上高で「杉並店」に問題がありそうなことがわかります。そこで「詳細」を押してさらに詳しく調べてゆきます。すると図4のように水産部門が特に問題であることがわかります。引き続きこれを繰り返すことで、最終的には単品レベルにまで問題のあった箇所を特定することができます。

図3:基本帳票作成ツールの店別実績表による問題店舗の発見

図4:問題部門の詳細確認

同様に部門をキーとして問題店舗を絞り込んでゆくこともできます。チェーンストアでは店舗と部門を縦横にクロスさせた組織体制を持っている場合が多いですが、それぞれの立場で分析の視点を使い分けることで、より漏れなく問題点の抽出を行うことが可能となります。

現在では、ドリルダウン機能は一般的となっており、どのような分析ツールであっても大抵は備わっているものです。先回までの回で述べてきたように、しっかりとしたシステム運用体制が整っていれば、売上についても粗利についても比較的容易に問題抽出を行うことができる、と言うことです。

ところが、簡単に問題抽出ができるにも関わらず、「うちはうまくデータ活用できていない」といった声も多く聞かれます。なぜでしょうか!?

1つは、数値上の問題に対する現場の問題の真因特定が困難な点です。

少ない人員で多くの店舗や部門を運営しているチェーンストアでは、すべてをフォローする体制を作るのは容易ではありません。また、競合や天候など、数値に影響を与える外的要因も多く、現場の問題なのかその他の問題なのか調べること自体に労力を割かれてしまう場合も多く見られます。知識を身に着けるための教育も必要です。そんなことをしている間にも現場は動くし、作業に追われて分析にまで手が回らない実情を抱えている現場も多いでしょう。

もう1つは問題の抽出と、課題の設定・解決は別だと言うことです。

例え真因を掴むことができたとしても、その問題に対応する課題を設定してクリアしなければ、結局のところ数値を見ただけで終わってしまうのです。

当然ですが、なにがしかの現場の作業が変わらなければ、数値が改善されることはありません。本部で店舗の細かな部分までコントロールするチェーンストアもありますが、特に中小チェーンストアでは現場の判断のウェートが大きくなりがちです。

と言うことは、データ分析による数値改善を行ってゆくためには、本部だけではなく、現場でデータ分析による数値把握を行い、一番問題に身近な現場レベルで真因の特定を行い、課題設定とその解決を図ってゆくことが求められるのです。

次回は、現場でのデータ分析について確認してゆきます。

 

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 代表取締役 川久保 進一】経営管理修士(MBA)、中小企業診断士、1級販売士登録講師

【株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/)】
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動中。
@rms活用の各種セミナーや利益向上プログラムの企画・実施フォローを行っております。