第3回「システム運用の徹底でシステム化メリットを引き出そう!」

第1回「分類体系の見直しで売上・粗利の管理精度を向上しよう!(2)」

システム運用の善し悪しは業務効率化や業績向上に直接影響する!?

基幹系システム導入に期待する経営へのメリットの一つに、発注の精度向上、発注作業効率の向上が挙げられます。非常に多くの物品を取り扱う業種では、発注に関係する作業の負担が大きいため経営の効率化には重要なポイントとなります。
現在ではEOS(Electronic Ordering System:電子発注システム)が多く普及しており、従来からの紙や電話、FAX、口頭での発注をEOSに切り替えることで、大きく発注作業効率を高めることができるようになっています。
また、システム化により発注の精度が高まれば、欠品や品薄による機会ロスを削減することができ、さらに発注ミスによる過剰在庫が減少するなど、直接的な業績の向上に寄与します。
作業の標準化を行うことによって、店舗間の差異が解消され、発注の良し悪しによる業績のばらつきを少なくする(平準化)ことも可能です。

このように、経営効率が高まったり、業績が改善したりと、良いこと尽くめに思えますが、システムを導入しさえすればそうなるのかというと、決してそうではありません。成功に導くためには正しい運用を行うという大前提が必要になります。
現実的には、せっかく単品管理ができる基幹システムを導入していても、正しい運用が徹底されておらず、その持てるポテンシャルを十分に発揮できていない企業も多いのです。

例えば先に述べたEOSによる発注だけとってみても、その割合を示すEOS比率(企業の全発注件数に占めるEOS発注件数の割合)は企業によってばらつきがあります。システム化を行いやすいドライグロッサリ部門(JANコードの付いた商品が多い部門)において、精度の高い企業は90%台を実現できていますが、平均的には60%~70%台の企業が多いと思われます。
その差30%以上の開きがあることを考えると、運用精度の高い企業とそうでない企業では、業務効率に大きな差が生じているであろうことは想像に難くありません。

 

運用精度を高めるには!?

基幹系システムを運用する上でまず基本となるのは前回の記事でも取り上げたように、コードによる単品の管理です。商品の登録がしっかりとできていなければ、全ての業務でイレギュラー発生の要因となります。そしてイレギュラーは「余計な仕事」に繋がります。
一番わかりやすい例はレジ業務での商品未登録でしょう。登録されていなければピーと警告音が鳴り、売場に売価を確認しに行ったり、店長に値段を聞きに行ったり、バイヤーに電話したり・・・当然業務の負荷となります。
当たり前すぎてそれぐらいできているだろうと思っていらっしゃる方も多いかもしれません。しかし「うちのレジでは一切商品未登録は発生しない!」と言い切れる企業はどれほどあるでしょうか!?運用精度の高い企業では、レジでの未登録は年にほんの数件です。

商品登録においては、まずはバイヤーなどの部門担当者が、商談からはじまって、改廃の登録を確実に行うまでの業務ルール作り(商品マスタの整備)を行う必要があります。定番商品だけでなく、スポットや特売商品なども含め網羅的に取り組まねばなりません。この社内ルール作りこそが運用精度を高める上で重要なポイントとなります。システムベンダーは運用ルールについて例示はしてくれますが、当然、ルールの徹底まではやってもらえませんので、運用ルール決定と定着化は自社の力で行う必要があります

もちろん、商品登録しただけではEOS比率は高まりません。先ずは取引先からの協力を得て、EOS発注に対応していただく必要があります。バイヤーや店舗においても、発注はEOSで行うということを徹底する必要があります。どこかの店だけ機械が苦手な担当者だから、と、手発注を許すようなことを行っていれば一向に精度は高まりません。
手発注はイレギュラー対応なので、経理の処理に負担がかかりますし計算ミスなどのリスクも高まります。不正や誤納品、未納品にもつながります。
完全にイレギュラー対応を無くすことは難しいかもしれませんが、全員が「イレギュラーはみんなの負担に繋がってしまう」と意識することが運用精度の向上に繋がる第一歩です。
このようにして全社的に運用の徹底を意識することで初めて、システムの利点を十分に享受することができるのではないでしょうか。

<ポイント>
・商品マスタの整備を徹底する
・EOS・EDI化率を高める意識を持つ
・運用ルール作りとその徹底を業者任せにしない

図:業績へのフィードバックまでの流れ

 

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 代表取締役 川久保 進一】経営管理修士(MBA)、中小企業診断士、1級販売士登録講師

【株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/)】
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動中。
@rms活用の各種セミナーや利益向上プログラムの企画・実施フォローを行っております。