今回は実際に@rmsをご利用されているユーザーからお問い合わせ頂いた疑問にお答えした例を取り上げてみましょう。

数値がどう変化したのか調べたい

 企業全体や店舗で新たな仕組みを導入したり、新たな取り組みを行う場面はしばしばあろうかと思います。例えば・・・
 ・ポイントカードの導入・刷新
 ・レジの入れ替え
 ・電子マネー対応
 ・販促、チラシの刷新
  など

 このような時はその結果が数値改善につながったのか確認したくなります。
 今回のお問い合わせは

   「取組の前後で客単価が上がったのかどうか知りたい」

 との事でした。
 このような場合に使用するのは一定期間の数字の推移を確認する推移表か、ある特定期間同士を比較できる比較表が最適でしょう。

一定期間の推移を確認する

 基本帳票作成ツールでは推移表使って前後比較を行うことができます。

 基本帳票作成ツール → 月次実績推移表

 調べたい期間を指定し、項目を選択することで表示されます。

表:各種実績数値を選択して表示する事ができる

※実際の表示イメージ (全店・全部門の客単価6カ月間の推移)

●ある特定期間同士で比較する

 推移表は時系列の流れになりますが、どうしてもシーズンの影響を受けてしまうため、同一シーズンで比較したい場面などもあります。その場合はMDツールを利用します。

※MDツール → 売上分析チェッカー → ②売上分析表(期間指定)


 比較したいカテゴリ、期間を指定して表示させると以下の表が表示されます。

※指定年の9月~11月とその1年前の9月~11月の実績比較

 いかがでしょうか。簡単に推移表や比較表で実績を確認する事ができます。
何か新たな取り組みを行った場合は、上記のような帳票を使って実際に効果があったのかどうか、検証を行ってみましょう。

 より詳細に分析したい場合は、数値ダウンロード機能を使って、エクセルなどを使用して加工する事が可能です。エクセルが得意な方は是非チャレンジしてみてください。

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。


 今回は生鮮部門での値入ミックスについて解説してゆきます。

●グループごとの値入率把握

 前回から、商品を3つのグループに分けて考える方法をお伝えしています。
ドライグロッサリーの商品群においては、システムに登録されている原価売価から、自動的に値入率を計算する事ができるので、比較的簡単にグループ分けする事が可能です。
 一方、生鮮部門は日々原価売価が変わるため、値入ミックスを行うには、少々工夫が必要です。

 生鮮部門は日々の粗利の変動が大きい部門ですが、一般的なスーパーマーケットでは店全体の売上高に占める割合が半分以上になり、しかも利益の大きい部門であるため、非常に重要なポジションを占める部門になっています。ここで日々の値入をコントロールすることができるかできないかで、業績が大きく左右されるのです。

 実際に現場で作成している値入ミックス表は下表(図1)のようになります。
では、どのようにして生鮮部門の値入ミックス表を完成させるか確認してゆきましょう。

図1.実際の値入ミックス表

  


●低値入、高値入グループの値入を算出する

 図1を完成させるためにまず行うことは、低値入商品と高値入商品の欄を埋める事です。
 生鮮部門の低値入(チラシ・インプロ商品)、高値入(利益商材等)については、仕入伝票から単品単位で値入率を計算します。
 全アイテムの値入計算を行うと非常に労力がかかりますが、低値入、高値入については店によっても異なりますが、そんなに多くないはずです。伝票と設定売価から、例えば下表(図2)のように計算を行うことができます。

図2 低値入商品、高値入商品の値入計算

 低値入グループ、高値入グループそれぞれを合計することで、図1の「低値入商品」「高値入商品」の部分を埋める事ができます。



●定番商品の値入を算出する

 定番商品についてはアイテム数が多いため、低値入商品や高値入商品のように単品で値入計算を行うと非常に手間がかかってしまいます。
 よって、簡便的に計算するため、定番商品については一律の値入率を決定し、それを元に値入額を逆算します。定番商品についてはほぼ安定的に値入率が推移する傾向にあるため、大きなブレは発生しません。

計算手順は以下のようになります

→ 部門合計売上高から各グループ毎の構成比算出

 低値入、高値入の単品の売上合計は図2を作成するとわかるので、合計売上高がわかれば、定番の構成比もわかります。
(定番構成比 = 部門全体売上構成比100% -低値入構成比-高値入構成比)

→ 定番売上高の算出

 定番売上高 = 定番構成比 × 部門全体売上高

→ 定番値入高の算出

 定番値入高 = 定番売上高 × 定番値入率(一律で設定したもの)

 

●値入ミックス表の完成

以上3つのグループの計算が終われば表は完成です。(図3)
これを日々、繰り返し、一週間単位で集計します。(図4)
仕組みが理解できて来たら、計画値を設定してPDCAを回してみましょう。慣れてくれば1日10分もあれば実績と計画を作成する事ができます

図3 日別値入管理表の例

図4.日別値入管理表を1週間ごとに集計

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。


 今までは主に売上をどう高めてゆくかと言う観点でデータの見方をご紹介してきましたが、今回と次回は、値入ミックス手法とアームズを使いながら、各部門の利益コントロールを行ってゆく方法を考えてみましょう。

 今回は前回に引き続き、値入ミックスの具体的な活用方法について解説してゆきます。

1.利益コントロールの方法

 前回は、商品を3つのグループに分けて考える方法をお伝えしました。(図1)
では、トータルの利益率を目標利益率に近づけるために、何ができるかを考えてみます。

図1.値入ミックス表

(1)利益構成を変化させる
 それぞれのグループの構成比が算出されています。トータルの値入率はこれらの構成が変わると当然変化します。値入率の高いグループの構成比が高くなればトータルの値入率も高くなるし、構成比が低くなればトータルの値入率も低くなります。
 逆に、値入率の低いグループは構成比が高くなればトータル値入率を下げる要因になり、低くなれば高める要因になります。

 という事は、今よりも値入率を高めようと考える場合、売場づくりを行う際には値入率の高いグループの構成比をどう高めるか!?という視点を持てばよいことになります。

では、そのためにはどんな方法が考えられるでしょうか。

・特売商品の横に高値入商品を関連陳列する
・品質POPでアピール力を高める
・コーナーを作ってみる
・試食販売を行ってみる
・大量陳列を仕掛ける
など・・・

 高い値入の商品は、あまり有名ではないものも多いため、その価値をどのようにお客様に伝えてゆくのか、と言う点が重要です。また、売り込みたい商品選定のポイントは、売り手が「美味しい」「お値打ち」と心から思えるような、本当のおすすめ商品を選ぶことです。

 他にも戦略的な手段としてはチラシ回数を減らす、特売回数を減らす等も、利益構成を変化させる大きな要因となります。

(2)値入を見直す
 構成比をコントロールする以外でトータルの値入を高める方法としては、値入そのものを見直すことが考えられます。 そしてその方法は「売価を上げる」もしくは「原価を下げる」そのどちらか、あるいはどちらも、となります。

「売価を上げる」方法をとる場合は客離れをおこなさいよう、入念な競合店売価調査を行うなど、慎重さが求められます。
「原価を下げる」方法は商談をして原価交渉を行うか、代替品に切り替えるなどの方法になります。多くはバイヤー業務の中で取組む事になります。

 値入を見直す方法は、どちらも店舗側では実施できない事が多いと思われますので、現実的な実施方法としては(1)の構成を変化させる方法がメインとなるでしょう。

2.目標設定

 値入率はどこまでも高められるものではありません。低すぎても高すぎても問題が生じます。適正な値をどこに持ってゆくのかは、会社の方向性が大きくかかわってきます。例えば、ディスカウントスーパーと高質スーパーでは、目標とする値入率が大きく異なるだろうというのは容易に想像できます。
 とは言え、何が適正か見極めるのは難しいものがあります。しかし、ある程度現状がわかれば、目標が立てやすくなります。

 まず、部門単位で目標利益率を設定し、どのような構成にデザインするか図1に目標値を落とし込んでゆきます。こうすることでどの部分をどれだけ高めればよいか(あるいは低下させればよいか)わかるようになります。

 あとは現場でPDCAを繰り返しながら、1で述べたような方法を駆使しながら目標値を目指して取り組みます。その際注意すべき点は、シーズンや競合店等、外部環境の影響に応じて目標を適時見直しかけ、固定してしまわない事です。

その取組の中で良い取り組みが行えた場合は、事例としてまとめ、社内で共有してみましょう。

次回はより具体的に生鮮部門での値入ミックスについて解説します。

図2.事例の共有

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。


 今までは主に売上をどう高めてゆくかと言う観点でデータの見方をご紹介してきましたが、今回と次回は、値入ミックス手法とアームズを使いながら、各部門の利益コントロールを行ってゆく方法を考えてみましょう。

 
1.値入ミックスとは

 商品には様々な特性があり、値入(原価と売価の差)も様々です。例えば、チラシや集客のために用意する特売品は値入が低い場合が多いでしょう。一方で、特にTV等メディアでも宣伝せず、あまり有名でないメーカーの商品は比較的値入が高く設定されていることが多いかもしれません。

 売価は商品を販売する企業が決定権を持っていますが、その商品が売れる値段でつけなければならないため、値入率を一本化することはできません。また、集客目的で商品を展開する時や、逆に手間を掛けてでも提案したい商品を展開する時など、企業が戦略的に値段を決定する場合もあります。

 最終的にはそれらがすべて合わさって部門や会社の粗利益に繋がるわけですが、当然値入の低い商品ばかりが売れると全体の粗利益も少なくなります。ゆえに、この辺りの数値管理をアバウトにやってしまうと、思わず利益を落す結果になりかねません。

 値入ミックス管理は、これら異なる値入の商品群をうまく組み合わせてトータルの利益確保を図る手法です。

 
2.商品のグルーピングでミックスする

 値入ミックスでのトータル利益コントロールを小売業等、多数品目取扱い業種で行う場合、全品管理する事は現実的ではありません。そのため、ある程度商品をグルーピングしてグループ単位で管理を行います(図1)。

図1 値入ミックス表

相乗積=構成比×値入率

 図の例では、定番商品、低値入の商品、高値入の商品と、3つのグループに分けています。こうすることで、それぞれのおおよその構成比、値入率がわかればトータルの値入率を算出する事ができます。
 このように、商品をグルーピングしてそれぞれの構成と相乗積を見ることで、全体の構造が理解しやすくなります。利益を取るべきグループがしっかり利益を確保できているのかどうか、集客のための特売をやり過ぎていないか、あるいはもっとお客様に利益還元できるかどうか、等、販売戦略を練るためには必須の帳票です。

 計算の方法は下図のとおりです。

図2 トータル値入率の計算方法

 先ずはそれぞれのグループごとに構成比と値入率が算出できれば、表を作ることができ、現状の実態を把握することができます。アームズMDツールでは、特定の単品を登録して、一定期間の売上やみなし粗利(≒値入)を確認することができる帳票があります(単品の原価登録を行っている部門のみ)。

<MDツールで単品を登録する場合のメニュー>
MDツールメニュー → 特定単品チェッカー → 特定単品実績(設定)

<MDツールで単品実績を確認する場合のメニュー>
MDツールメニュー → 特定単品チェッカー → 特定単品実績(実績確認)

 上記表の場合、定番商品は数が多すぎて登録することが難しいかもしれませんが、低値入商品と高値入商品はそこまで多くないため、登録できるはずです。登録するとそのグループでの実績数値を確認する事ができるようになりますので、あとは上記値入ミックスの表を作って現状の利益構造を確認してみましょう。

 次回は値入ミックスの具体的活用法について解説します。
 
 

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。


 前回第6回目では目標の作り方を見てきました。今回の第7回目では、目標に向けてデータを確認しながら、具体的な作戦に落とし込んでゆく方法を考えてみましょう。

1.目標の確認と行動計画

 前回は自身で担当する部門と他店舗の同部門との数字比較等を通じて、どの程度の水準が必要かを見極め、目標設定を行う方法を確認しました。売上や利益の目標が決定したら、次はそれをどう具体的な行動計画に落とし込んでゆくのかが重要となってきます。
 目標と行動計画は一回立てれば終わりではなく、定期的なサイクルで検証と新たな計画立案を繰り返す必要があります。これがいわゆるPDCAサイクルです。

※PDCAサイクル→Plan(計画)→Do(実行)→Check(検証)→Action(行動)を繰り返す仕事の流れの事

 このPDCAサイクルの期間は、取扱い部門の性質によっても変わってきますが、食品スーパーの場合は週間単位と考えればよいでしょう。要するに、1週間単位で目標との差を確認し、次週の計画を立て、そして実行してゆく、その流れを作ることが重要です。

2.計画の詳細立案
目標設定では自分の担当する部門全体の目標を作成しました。ところが、いざ具体的に計画を立てようと思っても、あまりにも漠然とし過ぎてうまく考えられない場合があります。そこでまずは部門を分解し、より単品に近づけて何を行ってゆくか検討してゆきます。

●カテゴリ別の数値分析
 たいていの場合、部門は複数のカテゴリに別れていますので、まずは全体で良かったかどうかを確認した後、カテゴリ別の数値分析を行います。

図1MDツール → 売上分析チェッカー → 部門別売上実績

部門全体で成績が良くても、カテゴリ単位で見ると問題がある場合もあります。また、計画を立てるにしても、すべてのカテゴリ、すべての単品で計画立案するのは現実的ではありません。どのカテゴリの実績が良かったのか悪かったのかを調べ、足を引っ張っているカテゴリは何なのか、伸ばせそうなカテゴリはなんなのか、それらの把握に努め、要チェックカテゴリを決め、どの水準(例えば昨対クリア等)に持ってゆきたいか、まず決めます。

●単品の実績確認
 すべての単品実績を確認するのは現実的ではありません。そこで、先ほどチェックした要チェックカテゴリの、しかも上位商品のみ確認することにします。

図2MDツール → 自店単品ランキング(本年上位と昨年上位)
※図1の「単品」ボタンからジャンプする事ができます。

 これらの単品から、改善が必要なもの、もっと売り上げが伸ばせそうなものを探してゆきます。昨年の販売上位と今年の販売上位、それぞれ上位30品ずつ検討してゆき、目標と現状の差に応じて、数件の対策を決定します。

●他店の単品売れ行きチェック
 他店で売れていて自店で売れていないもの、力を入れていなかったものが無いかチェックし、計画に含むべき事項が無いか検討します。

図3 MDツール → 単品ランキング(図2からジャンプできます)

●計画の立案

 以上のように、自店のデータを見ながら具体的な計画に落とし込んでゆきます。
この際、「第3回 販売データで簡単チャンスロス発見。売り逃し撲滅!大作戦!」の内容も同時に実行すると精度が格段に上がります。

 はじめは図4のように簡単な計画で十分です。本部からの販売指示商品とのバッティングには注意しましょう。また、計画の中に本部指示商品を盛り込んでも良いでしょう。

図4 菓子部門の来週の計画例

いかがでしたでしょうか。立案した計画は確実に実行し、途中経過をチェックしながら、最終検証を行ってPDCAサイクルを確立しましょう。

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。


 第6回目は、これまで見てきたようなデータ活用の手法を有効的に実践に活かすために何が必要なのか考えてみましょう。

●目標づくり

 ここまでは、データ分析ツールを使って業績を向上する方法をいくつかご紹介してきました。これらの手法を何回か繰り返すうちに、現状の数値が改善できる事を実感できると思います。
 そうこうして手際よくデータ活用を使いこなし、業績を上げる事ができるとわかったとして、さて、どこまで業績を高めることができますか!?また、どこまで高めるべきでしょうか。
 売上と利益を追求し、現場に求めている企業はよくありますが、その中にいると、ふと疑問を持たれる方も居るかもしれません。

「売上向上と利益向上は両立できないのでは?」
「利益率を追求しすぎるとお客様が離れてゆくのでは?」
「売上を高めるにも限界があるのでは?」
などなど・・・

そのような時、何を拠り所に仕事を進めればよいのでしょうか。
その拠り所が「目標」です。

 企業として予算の設定がなされていればそれが目標となるでしょう。ところが、予算が精密に設定されてない企業も実際には多々あります。また、その企業が置かれている状況によっても目標の正解は様々あると思います。

 「目標」は拠り所ですので、目標がなければ計画が立て辛く、計画が立て辛ければ、売場づくりやその検証もやりにくいので、明確な目標はデータ活用に必須と言えます。

 では、自分が目標とすべきものが見えない場合にはどうすべきでしょうか

 その答えは色々考えられますが・・・
           まずは自社内のナンバーワンを目指しましょう!

●他店との比較

 さて、ナンバーワンを目指すにしても他の店舗の数字がいくらなのかわからなければ話が進みません。企業によっては会議などで資料が配られることもあると思いますが、ここでは基本帳票作成ツールを使った比較帳票をいくつか確認してみましょう。

図1は最も基本的な表です。店舗が縦軸に取られ、各項目が横軸に並んでいます。時間軸は日・週・月で用意されています。部門を絞り込んで自分の担当している部門を表示し、比較してみましょう。店舗ごとに売上が大きく異なる場合、比較する数字は予算比や昨年比を使用すると比較しやすくなります。

図1実績表(画像は週次)

次は、推移で実績を比較する帳票です。実績はたまたま良い時や逆にたまたま悪い時がどうしてもあります。そんな時、推移で実績を確認すると、おおよその傾向がわかるので、比較しやすくなります。また、改善に取組んでいる時などは、その進み具合を確認するのにも推移表がわかりやすいでしょう。

図2 実績推移表(画像は週次)

 基本的には実績表と推移表で自店と他店を比較する事ができますが、「基本帳票作成ツール」には応用として「週次指数マトリクス」(図3-1)という帳票があります。
昨年比で自分が担当している部門を他店と比較した場合、時に理不尽な事が発生します。部門は店舗の一部分ですから、例えば、店舗全体の客数がなんらかの要因で去年と比べて極端に少なかった、などの場合、どうしても他店と比べ見劣りしてしまいます。競合店が近隣にできた時などは、しばらくずっと昨年比が悪いまま、といったこともあります。
 そのような時は、店舗全体の昨年比を100として各部門の昨年比を再計算(図3-2)します。
(例:店舗全体昨年比90% 自部門95% →再計算後 店舗全体100% 自部門105%)
この数値はある意味、店舗にどれだけ貢献したか、足を引っ張ったか、という基準で見る事ができますので、他店との純粋比較に利用できます。

図3-1 指数マトリクス(再計算前)

図3-2指数マトリクス(再計算後)

このような帳票を利用しながら目標を作り、その目標に達成できるよう、手立てを実行しながら、そして、また、これらの帳票で結果を確認する事が基本の流れです。

まずは自分の受け持つ部門と他店と比較し、目標づくりを行ってみましょう!

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
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 第5回目は、生鮮部門でしっかり利益を出すには重要となるロス対策について、データの見方のコツを解説してゆきます。

・利益を分解してみる

まず、「粗利益」の中身を分解してみます。そうすると、まず、大きく「値入」と「ロス」に分ける事ができます。販売する前に決定した売価から原価を引いたもの、つまり「値入」から「ロス」を引いたものが「粗利益」になります。

という事は、仮に「粗利益」が思ったような実績に届いていない場合、その原因は「値入」か「ロス」のどちらか(あるいは両方)に原因があるという事です。
「値入」は比較的コントロールしやすい数値です。問題は「ロス」で、ここを如何にコントロールするかが安定して利益を確保するためには重要となります。

さらに、「ロス」は「廃棄ロス」と「値下ロス」に分ける事ができます。
※ロスの概念はもっと幅広いですがここでは計算上発生するロスについて解説します。

どの商品で、どのくらい廃棄と値下げが発生しているのか!?それを把握する事がロスをコントロールするための第1歩となります。

・廃棄の登録

値下げはレジで売上が計上される際に自動的に判別されますが、廃棄はハンディターミナルなどで別途登録する必要があります。この処理を忘れると正しく数字が把握できませんので重要です。

・他店と比較してみる

数値が把握できるようになったら、自社の他店と比較して目標を設定します。
比較の数値は「ロス率」です。ロス額だけで数字を見ても、店の大きさによってバラバラな金額になるため比較しづらいので、管理レベルを測るには「ロス率」が適切です。
また、推移で「ロス率」を見ることで、平均的な数値が推測できます。
※ロス率 = 売上高に占めるロス額の割合。低い方が良い

もちろん目標は「全店でトップレベル」です!

図:MDツール ロスチェッカー → 15週ロス率推移表

(画像クリックで拡大表示可)

・改善のポイント

まず、毎週のロス額を年間に換算してみます。部門によっては莫大な金額になるので、毎日のちょっとした積み重ねがどのような結果に繋がるか、実感することが第一歩です。

改善を行うには単品のロスを確認します。全アイテムを確認して対策をするのは現実的ではありませんので、毎週上位10アイテム程度に絞り込んで数字を確認し、対策を打ちます。

図:MDツール ロスチェッカー → 単品ロス管理表

・対策の考え方

ロスの多い商品を把握できたら、その内訳(値下げが多いのか廃棄が多いのか)を確認します。
部門や店舗の置かれている状況によって対策は様々ですが、以下にいくつか対策の例を示しますので参考にしてみてください。

・販売日を限定する(毎日→曜日を限定する)
・販売時間帯を調整する
・製造量を調整する
・販売場所を変更する(よく売れる下段に変えるなど)
・フェース数を変更する
・バッティングする商品がある場合は調整する
・他の死筋商品をカットする
・取扱いそのものを再検討する
・値下げのタイミングを変更する

いかがでしょうか。組み合わせて実行できることもあるかもしれません。

継続して毎週数値確認を行い仮説を立て、検証をしながら進める事が重要です。

年商100億円の企業でロス率1%削減できたら1億円の粗利改善です!
是非、一度お試しください!

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
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 第4回目は、第1回でも取り上げたABC分析を使って、どんな商品を売り込んでゆけば業績を高めることができるかを調べる方法についてご紹介します。

●販売拡大のコツ
 2つの味の異なる商品A,Bが隣り合って3フェースずつ陳列されていたとします。同じ期間でAが20個、Bが5個売れました。合計で25個販売できたわけですが、この場合、もちろんAの方が良く売れる商品だったわけです。

 では、Bを5フェースに広げ、Aを1フェースに狭めると販売合計はどうなるでしょう?
 また、Aを5フェースに広げ、Bを1フェースに狭めると販売合計はどうなるでしょう?

 陳列に必要なスペースはどれも変わりありません。ですが、合計の販売数には違いが出てくるだろうと想像できます。この場合、一般的には3番目のA5B1の場合が最も販売数量が上がるであろうと考えられます。

 「売れ筋拡大、死筋排除」良く売れる商品を広げ、あまり売れない商品を狭めてゆこうという事で、これが考え方の基本です。
 この言葉と意味をご存知の方は多いと思います。ところが、みんな売場でどうこれを実践しているか!?と問いかけてみると、勘と経験でなんとなく・・・という方も多く見かけます。これでは効果的とは言えません。

 あまりにも商品の数が多く、人が勘と経験だけで実践する事は現実的にはできないのです。
 
 
●売れ筋と死筋を分析する
 売れ筋商品の把握にはABC分析(パレート分析)を利用します。

図1 MDツール→ABC分析→カットアイテム抽出

図1はあるスーパーのカレー売場のABC分析結果です。
売上高の高い商品から並べて、金額を足して行き、上位75%に占める商品アイテム数が59、75~90%の間にある商品アイテム数が43、残り90%~100%が80となっています。
全体で182アイテムですから、約1/3の商品で売上の75%を作っていることになります。

上位75%に入っている商品が「売れ筋商品」と言えるでしょう。
MDツールでは各数値をクリックすることでその商品の実績が表示されます。(図2)

図2 売れ筋商品の単品実績

これらの商品の売場拡大を検討することがひとつ、方法として考えられます。
売場を減らす商品を探すには、逆に90%~100%の間にある商品を調べれば良いのです。
 
 
●実戦での活用
 やってみると分かってきますが、売れ筋商品の中には「ほっておいても売れる」という商品が結構存在します。あるいは、売ってもあまり利益が無いのでできればほかの商品を売り込みたい、と思えるような商品も多い事でしょう。
 そのような時のために、MDツールのABC分析では売上と利益のマトリクスで見る機能が備わっています(図3)。

図3 売上高/粗利益率のマトリクスABC分析

先程と同じカレー売場の数値ですが、今度は横軸に粗利益率が取られています。
マトリクスを見ると、「売れていて、儲かっていない・儲かっている」「売れてなくて儲かっている・儲かってない」など、様々な切り口で商品を探すことができます。

これで拡大すべき商品、そうでない商品はわかってきそうです。

では、マトリクスのどの枠の商品を拡大し、売り込むべきでしょうか!?

私のおすすめは、「売れ筋商品」ではなく、「2番手」の商品です。今は売り込んでいないけど、そこそこ売れているし、もっと売り込んだら爆発的に売れるかも!?
そんな商品は大々的にやってみる価値があると思いませんか!?

ABC分析を使って商品を調べる時期、頻度は、部門やカテゴリによっても変わるでしょうが、

・エンドの展開を考えるとき
・平台に置く商品を考えるとき
・棚替えを考えるとき

などがタイミングとしては良いでしょう。

是非、色々な仮定を組み立てて、現場で実践してみてください。

 

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
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第3回目は、販売データを検証することによって簡単にチャンスロスを発見し、改善を実施する方法をご紹介したいと思います。

●チャンスロスの意味再確認

 買いたい商品が売り切れで買うことができなかった・・・誰もが経験したことがある事でしょう。お店にとっては商品がありさえすれば売上に繋がったはずですが、結果として販売できませんでした。これが「チャンスロス」です。

 この現象は売場のあちこちで起こっており、すなわち「チャンスロス」の撲滅は即売上UPに繋がります!

 また、お客様は頻繁に、自分の買いたい商品がお店に無い場合、他のお店で用を済ませる傾向がありますので、お客様をしっかりと繋ぎとめるためにも、「チャンスロス」撲滅の取り組みが必要となります。
 
 
●データで読む「チャンスロス」

   商品1品1品についてチャンスロスの有り無しを毎日調べるとなると、大変な労力がかかってしまいます。
 ここでは、データを確認して簡単に「チャンスロス」を調べる方法をご紹介します。
 @rms(アームズ)のMDツールでは、日別の販売データをカレンダー形式(図1)で確認することができます。

図1)MDツール 販売実績カレンダー

これはある店舗のパン部門のデータで、売上数量の多い順番で並んでいます。
日と曜日の欄はその日の販売数量を表しています。
「チャンスロス」が発生している部分は赤枠部分と黄色マーカー部分です。
※赤枠と黄色マーカーはわかりやすいように後から記したものです

赤枠部分 → 商品の販売が無い → 欠品していたのではないか!?
黄色部分 → 3,3,3と同じ販売数が続く → 3個売れた後は欠品していたのでは!?

いかがでしょう!?「チャンスロス」を簡単に見つけることができました!
 
 
●「チャンスロス」を無くすための具体策

 データを確認することで「チャンスロス」の発生している商品を知ることができました。
ただ、ここで終わってしまっては何も意味がありません。
具体的な行動に移してゆきましょう。

以下はその具体例になります。
商品の特性、売場の状況、人員の体制などで適する方法は変わってきますので、参考にしながら自分の店にあった方法を見つけてください。

例:販売上位商品だけは絶対欠品しないよう毎日在庫と発注内容をチェックする

例:欠品が多い商品の棚札にシールを貼る

例:発注数量調整のため発注時にEOBの最終販売時間を参考にする

例:発注前に夕刻の天気予想を必ずチェックして発注数を調整する

例:特売残との兼ね合いをルール化する

例:複数担当者間で「チャンスロス」対象商品の情報をしっかり交換する
などなど

いかがでしたか!?
MDツールが無くても、同じような帳票が出せれば簡単にチャンスロスの多い商品を探すことができます。

是非取り組んで売上アップを目指してください!

 

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。

今回はアームズを活用し、生鮮部門で日々の利益管理を行う具体的な手法についてご紹介します。

本来、粗利益を確定させるには棚卸が必要になりますが、棚卸作業を毎日行うのは現実的ではありません。その為、生鮮部門では、多いところで週に1度、少ないところでも月に1度程度のサイクルで棚卸を行い、利益の管理を行っている企業がほとんどだと思います。

しかし、日々利益を確保しながらもダイナミックな売場づくりでお客様に提案を行ってゆくには、それでは不十分です。
そこで、日毎の値入ミックスによる管理手法を導入し、おおよその利益を把握しながらリスクコントロールされた売場づくりを行ってゆく必要があります。

 

1.目標値入率の設定

なにはともあれ、まずは各店の各生鮮部門で目標値を設定します。
ここではある店舗の水産部門の例で確認してゆきます。

【図1.値入ミックス目標】

この企業の水産部門粗利益率予算は31%で、この店舗の水産部門平均ロス率は5%とします。簡易的に 粗利益率 + ロス率 = 値入率 と捉えると値入率予算は36%となります。

部門の商品を「低値入=主にチラシ・インプロ商品」「高値入=おすすめ、利益商材」「定番=それ以外」と3つに分け、それぞれの構成比、値入率を設定します。
※初回で内訳がわからない場合は後述の日別値入管理表で一度現状数値を算出してから目標設定を行います

 

2.日別値入管理表の作成    日別値入管理表2014税対応版v2(売上計算式入)

「低値入」「高値入」のメイン商品に関して、伝票から原価を計算し、設定した売価と共に表に記入し、目標値と実績値を埋めてゆきます(図2)。
単品レベルで伝票から数値を拾うため、正確な値入を算出できます。
「定番」は部門の売上から「低値入」「高値入」を除いた金額になります。値入率は定番商品のおおよその平均値入率を設定しておきます。実績はアームズのMDツール、単品実績から簡単に調べることができます。図3が出来上がりイメージです。
完成した表で実績と目標の乖離を確認し、今後の対策を検討します。

【図2.日別値入管理表】

【図3.日別値入管理表見本】

※株式会社エムアンドシー研究所「週間マネジメント7つ道具マニュアル」より

 

3.日々の累計と週間実績の確認

日別値入管理表の昨日実績を入力した後、週間値入管理表(図4)を確認します。
週の途中で目標値と実績に乖離がある場合、週の後半の作戦を変更し、再度目標を目指して利益コントロールする事ができます。

例えば水曜日の段階で次のような場合・・・
利益は取れているが売上が予想より低い → 週末に大インプロを展開し売上確保
売上は取れているが利益が予想より低い → 週末に高利益商品を大展開して利益確保

【図4.週間値入管理表】

※株式会社エムアンドシー研究所「週間マネジメント7つ道具マニュアル」より

 

4.店長とのミーティング

これらの計画と実績を元に、日々店長とのミーティングを実施します。


「鮮魚部門チーフと店長のミーティング」

 

5.棚卸結果との突き合わせ

週間値入管理表の結果+週間ロスの結果と棚卸の結果を突き合わせて乖離具合の確認を行います。それを続けてゆくうちにマージンがわかってきます。週間ロスはアームズのMDツールで簡単に確認することができます。
いかがでしょうか。
簡単に説明しましたが、アームズを利用した生鮮利益コントロールのPDCAサイクルを現場でしっかりと定着することができれば、確実に業績の改善を図ることができます。

もしアームズを利用されていなくても、手作業で値入コントロールは可能ですので、今回ご紹介した手法を参考に、是非、改善に取組んでみてください。

 

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。