第10回 値入ミックスによる利益コントロール③


 今回は生鮮部門での値入ミックスについて解説してゆきます。

●グループごとの値入率把握

 前回から、商品を3つのグループに分けて考える方法をお伝えしています。
ドライグロッサリーの商品群においては、システムに登録されている原価売価から、自動的に値入率を計算する事ができるので、比較的簡単にグループ分けする事が可能です。
 一方、生鮮部門は日々原価売価が変わるため、値入ミックスを行うには、少々工夫が必要です。

 生鮮部門は日々の粗利の変動が大きい部門ですが、一般的なスーパーマーケットでは店全体の売上高に占める割合が半分以上になり、しかも利益の大きい部門であるため、非常に重要なポジションを占める部門になっています。ここで日々の値入をコントロールすることができるかできないかで、業績が大きく左右されるのです。

 実際に現場で作成している値入ミックス表は下表(図1)のようになります。
では、どのようにして生鮮部門の値入ミックス表を完成させるか確認してゆきましょう。

図1.実際の値入ミックス表

  


●低値入、高値入グループの値入を算出する

 図1を完成させるためにまず行うことは、低値入商品と高値入商品の欄を埋める事です。
 生鮮部門の低値入(チラシ・インプロ商品)、高値入(利益商材等)については、仕入伝票から単品単位で値入率を計算します。
 全アイテムの値入計算を行うと非常に労力がかかりますが、低値入、高値入については店によっても異なりますが、そんなに多くないはずです。伝票と設定売価から、例えば下表(図2)のように計算を行うことができます。

図2 低値入商品、高値入商品の値入計算

 低値入グループ、高値入グループそれぞれを合計することで、図1の「低値入商品」「高値入商品」の部分を埋める事ができます。



●定番商品の値入を算出する

 定番商品についてはアイテム数が多いため、低値入商品や高値入商品のように単品で値入計算を行うと非常に手間がかかってしまいます。
 よって、簡便的に計算するため、定番商品については一律の値入率を決定し、それを元に値入額を逆算します。定番商品についてはほぼ安定的に値入率が推移する傾向にあるため、大きなブレは発生しません。

計算手順は以下のようになります

→ 部門合計売上高から各グループ毎の構成比算出

 低値入、高値入の単品の売上合計は図2を作成するとわかるので、合計売上高がわかれば、定番の構成比もわかります。
(定番構成比 = 部門全体売上構成比100% -低値入構成比-高値入構成比)

→ 定番売上高の算出

 定番売上高 = 定番構成比 × 部門全体売上高

→ 定番値入高の算出

 定番値入高 = 定番売上高 × 定番値入率(一律で設定したもの)

 

●値入ミックス表の完成

以上3つのグループの計算が終われば表は完成です。(図3)
これを日々、繰り返し、一週間単位で集計します。(図4)
仕組みが理解できて来たら、計画値を設定してPDCAを回してみましょう。慣れてくれば1日10分もあれば実績と計画を作成する事ができます

図3 日別値入管理表の例

図4.日別値入管理表を1週間ごとに集計

【著者:株式会社エムアンドシー研究所 川久保 進一】
株式会社エムアンドシー研究所(http://www.mac-lab.co.jp/
平成元年設立。流通業、中でも主にスーパーマーケットの業務支援を中心に活動しています。
@rmsではシステム全体構想時からサイバーリンクス社と協力体制を構築しており、特に分析系ツールにおいては小売支援現場で培った様々なノウハウを提供しています。