CIOブログ

商流・物流の大波

最近よく本を買います。仕事関係を除いても昨年は50冊、今年はまだ半ばですが、昨年を凌ぐ勢いです。老眼との戦いで暫く本から遠ざかっていたのですが、また悪い虫がでてきたようです。本の多くは専門書の類で小説などはほとんど買いません。読書の偏りは認めます。最近思わずポチった「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」を見た妻からは「どこに向かっているの?」と言われ「趣味だから」と言い訳しています。

技術系の仕事をしていると専門書にお世話になります。若かりし頃本屋に行くことが趣味なのかと言われるほど本屋にいました。しかし今では全く行きません。Amazonで買います。口コミ、中身検索や索引で十分立ち読みと同じ効果があります。何と言っても複数の本屋を回らなくても目的の本が見つかります。ここ10年で私にとっての本屋といえばAmazonとなりました。Amazonの話、今頃?と言われそうですが、今回はAmazonです。

本当に面白い会社だと思います。通販で有名になりましたが、IBMを焦らせたAWSや、Appleより先んじたEchoなどがあります。登場した頃はIT企業と思わなかった人の方が多かったのではないでしょうか。今では単なるIT企業ではなく、実際の販売データを保持するクラウドサービスの雄といえます。AWSが利益を稼ぎ、その多くを未来への投資に回しています。驚くべき額ですが・・・

昨年はAmazon GOが注目されました。実験用の路面店です。お店に入り、商品を選び手にとってそのまま店を出る。レジに並ぶことなしに、です。監視カメラが人と行動を認識し自動でオンライン決済が行われます。仕組みは、バックヤードの監視カメラで沢山の店員がお客さまの顔を特定し、手に取った商品を見て、出て行く前に計算しカード決済へ回します。もちろんこれは冗談ですが、最近のAIブームの火つけ役であるコンピュータが手にいれた目、いわゆる画像認識技術を駆使し映像に映る顧客の行動から、手に取った商品までを認識し、精算業務を自動で行なっています。機械が目を持ったことで、人でしかできないと思われていたことを機械が実現した良い例だと思います。

今年驚いたのは、実在の店舗を持つスーパーマーケットの買収です。通販市場は10%ほどといわれており、かねてより残り90%である店舗運営に出ると言われていましたので、それ自体には驚きはありませんでした。しかし、買収金額は驚愕です。約1兆5千億円です。実は私、ある本を読むまでこのスーパーマーケットの名前を知りませんでした。当社のお客様から「その企業名も知らなかったのか」とお叱りを受けそうです。すみません。でも偶然にも購入していた本の中に「世界でいちばん大切にしたい会社」がありました。そうです、Whole Foods Marketについて書かれた本です。読み応えのある本でした。

最近よく騒がれるドライバー不足による宅配危機。その背景にはオンラインショッピングがあり、Amazonの例がよく言われています。通販の決定的なハンディである送料と時間を少なくするためには、当然ながら物流の効率化が必要でしょう。Whole Foods Marketの売りは「自然食品」ですが、なによりもAmazonにとって魅力的だったのは450店舗、自然食品という付加価値を求めるユーザの所得レベル、店舗立地と言われています。特に生鮮は顧客の近くに倉庫を置くことが武器となります。すなわち配送拠点へ買いに来させることが最も効率的でしょう。生鮮を通販社会に持ち込むのではなく、通販で培ったITを駆使し、商流と物流を実際の店舗に持ち込み、通販と店舗の融合と再編を目指すと思われます。その為、店舗に倉庫など物流拠点の機能を持たせる構図は容易に想像できます。加えて、今取り込めていない顧客層を獲得した後は、ITを使ったさらなる利便性を顧客に感じさせ、Amazonの持つエコシステムで魅了していくと考えられます。配送の最適化だけを見ればいずれ自動運転、シェアリングエコノミーやIoTが取って代わるでしょうし、本気になればいつでも参入可能なAmazonにとって、単なる効率化は枝葉末節だと考えられます。

第1回で書きました、顧客の入り口を抑え、既存産業を下請け化するかのような革命がまた一つ現実味を帯びてきました。日経新聞の記事も、“ネット×リアル 生鮮が主戦場、アマゾン「店舗を倉庫に」”でした。異論はありません。もっともだと思います。
しかし私は前出の「世界でいちばん大切にしたい会社」の読者として少し違和感を覚えています。次回、勝手な二つのストーリーを想像してみます。